研究課題/領域番号 |
26540141
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
田中 繁 電気通信大学, 学内共同利用施設等, 教授 (70281706)
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研究分担者 |
山崎 匡 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (40392162)
坂本 真樹 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (80302826) [辞退]
久野 雅樹 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (20282907)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オノマトペ / 音象徴 / 性格特性語 / 階層的脳内表現 |
研究実績の概要 |
平成26年度より、日本語オノマトペに対する主観的印象パターンと音象徴を表現する脳活動を機能的磁気共鳴画像法による計測を試みてきた。その結果、オノマトペの音声呈示および文字による視覚呈示により有意に活動する領域が、古典的言語野以外にも分散して存在する一方、音声呈示と文字による視覚呈示によって共通に活動する領域の存在が確認できた。しかしながら、当初の課題を遂行する上で、いくつかの問題があることも判明した。まず一つに、脳の解剖学的形状のみならず活動パターンには大きな個人差が見られること、もう一つには、個々のオノマトペを構成する音韻による活動パターンを検出できるほど計測された信号のS/Nが良くないことが判明した。この2点から、オノマトペを言語たらしめている音象徴のメカニズムに迫るには、現行の実験手法では困難であることが結論された。そこで、平成26年度の後半からは、性格特性語としての通常の形容語とオノマトペを刺激として文字呈示し、その性格特性語が自分または特定の他人に当てはまるか否かを問うという課題を用いて、オノマトペの意味的な相違と活動領域との関係を調べることにした。この課題では、10名の成人男女(男子6名、女子4名)を被験者として、1回または2回の計測を実施した。やはり、活動の有意性については大きなばらつきがあるものの、基本的なパターンには共通性が見られた。まだ、完全な解析が終了していないので確定的なことは言えないが、言葉に対する脳内表現には階層性があり、例えば、言葉のニュアンスは共通して活動する部位の周辺または言語野以外の異なる領域に分散して表現されている可能性が考えられる。今後は、この活動部位および活動の有意性における微妙な差異を、標準脳にマップして解析する必要があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画よりもやや遅れている大きな要因として、基本的には、脳の解剖学的形状のみならず、特に活動パターンには予想以上に大きな個人差が見られたことが挙げられる。この個人差を克服して、被験者に共通する活動パターンを求めるためには、さらに多くの被験者を用いた計測が必要である。しかしながら、個人差の原因として、ある共通の課題を遂行するときの脳の活動様式、言い換えれば、情報処理の戦略が被験者ごとに異なる可能性も想定され、その場合には、いくつかの考えられる戦略にタイプ分けをする必要がある。そのため、当初の目的を達成するためには更なる計測と詳細な解析が求められる。また、音象徴のメカニズムの解明に関しては、現在の計測方法の延長ではほとんど絶望的であろうと考えている。その原因は、個々のオノマトペを構成する音韻による活動パターンを検出できるほど計測された信号のS/Nが良くないため、必要な分解能が得られないからである。この点を克服するためには、例えば角回周辺にFOVを限定することによって分解能を上げる必要があり、さらに計測のための時間が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、音象徴のメカニズムを詳細に調べるためには、これまで実施してきたような全脳を対象とする計測では不可能であろうと考えられる。また、平成27年度の計測によって得られた仮説である「言葉に対する脳内表現には階層性があり、主観的印象の差異は共通して活動する部位の周辺または言語野以外の異なる領域に分散して表現されている」を実証するためには、これまで通りの全脳を対象とする計測が必要である。残り1年での研究期間を考えるとき、後者の研究計画を推し進めることが、安全な方策せあると考えられる。その際、脳の形状の個人差に起因する活動パターンのばらつきを解消することが最低限求められる。そこで、これまで計測した被験者の中で最も解剖画像にゆがみの少ない脳を標準脳とし、脳活動パターンの類似性・相違性を統計的に分類して、オノマトペによる主観的印象の脳内表象に迫る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理化学研究所のMRI装置が使用可能なタイミングと研究者の実験可能なタイミングが合わなかったこと、および十分な人数の被験者を集めることができなかったため、当初予定していた使用額に達しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
計測の計画を前倒しで実施することにより、過不足のない予算の執行に努める。
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