研究課題
昨年度末に西洋音楽における和音進行に関する研究には一応のまとめがつき、その成果を国際学術誌に載せることができたので、最終年度には音楽のリズムに重点を置いて研究を行った。特に、規則的な時間パターンがごく短い音によって反復して呈示されるときに、反復とともにリズムの知覚がどのように変化するかを、聴取者が楽譜に示したリズムを作るために、音符の始まりから次の音符の始まりまでの時間長を調整することができるような手続きによって調べた。その結果、先行する時間間隔によって、その後に呈示される物理的に少し長めの時間間隔が過小評価されることがあるという「時間縮小錯覚」の影響が見られ、この錯覚現象が音楽のリズムを模したやや複雑なリズム・パターンにおいても生ずることが判った。それ以外にも、一拍がどのような比率に分割されて聴こえるかについて、拍のくり返しが知覚にどのような影響を及ぼすかを調べた。さらに、音声の一部を切りとって何度もくり返して呈示することによって、その音声が歌であるように聴こえるという「歌化錯覚」が、日本語音声に関しても生ずることを確かめた。全体として、音楽の知覚において反復が重要な役割を果たしていることが認められた。これまでに得た知見と、過去の知見とを総合し、さらに実際の音楽を分析することによって、音楽における緊張感がどのような仕組みによって生ずるかについて考察した。その結果、音脈形成における多義性、時間的規則性の枠組みからの逸脱、調性の枠組みからの逸脱が緊張感を生ずることが多いとの見解に達した。そこで、これを示すための聴覚デモンストレーションを作成し国際学会において発表した。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 11件、 招待講演 1件)
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