研究課題/領域番号 |
26540152
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
木賀 大介 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (30376587)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 合成生物学 / 遺伝暗号 / リボソーム / tRNA / 直交性 |
研究実績の概要 |
本研究では合成生物学において重要な、遺伝子発現制御のプログラミングを行う。種々の制御情報の中で、ポジティブフィードバックは、短時間に細胞集団の挙動を変化させることができるという優位性を持つものの、細胞内反応のゆらぎにより自発的に活性化してしまうという欠点を併せ持つことが知られている。本研究ではこの問題を回避するために、ポジティブフィードバックを、2種の細胞を混合した場合にのみ発動する形式で構築する。 ポジティブフィードバック部分について、当該年度では、数理モデルと実際の細胞の挙動が合致しているかを確認した。まずそれぞれのシグナル生産系について、入力に対する出力の時間変動を精緻に測定した。その結果から、応募者の経験上妥当と判断されるパラメタを用いて作成されている現状の数理モデルが、妥当であると判断した。 さらに、ポジティブフィードバックによって活性化される遺伝子について、ポジティブフィードバックを引き起こすシグナル生産遺伝子に加えて、抗生物質耐性遺伝子も組み込み、その機能による増殖速度の変化を測定した。その過程では、2種類の菌の混合比を変化させることで、モデルと実験を比較した。その結果、想定通りに、2種類の菌の混合比に依存して、抗生物質存在下で、抗生物質耐性遺伝子の発現による増殖速度の向上が見られることを確認した。一方、抗生物質耐性遺伝子のリークによる発現は2種類の菌で異なることも確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リミッターの実装が遅れている一方、ポジティブフィードバックによって活性化される遺伝子について、ポジティブフィードバックを引き起こすシグナル生産遺伝子に加えて、抗生物質耐性遺伝子も組み込み、その機能による増殖速度の変化を確認することができたため、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に作成した、それぞれ異なる細胞間通信分子を生産する2種類の細胞が構成するポジティブフィードバック部分による、任意の強度の活性化を達成する。また、当初計画した、ポジティブフィードバックによる過度な活性化を防止するリミッターの効果の確認を続ける。その際に、数理モデルに基づいて統合を行うことで、全システムを確実に構築することが可能になる。ポジティブフィードバックの結果活性化される遺伝子として、これまでに達成した蛍光タンパク質および抗生物質耐性遺伝子に加え、バイオプラスチックやアミノ酸の合成系など、応用を志向した系の発現を行う。増殖速度の差が問題になる場合には、適切な負荷を与える遺伝子発現を加えることで、増殖速度の調節を行う。また、抗生物質耐性遺伝子のリークによる発現が2種類の菌で異なることに対する改善も行う。 全システムの数理モデルが完成しているため、プロモータ強度やたんぱく質分解速度などの種々のパラメタについて、望まない種々の挙動をしてしまう不適切なパラメタの組み合わせの場合分けが可能である。培養実験が計画通りに進まない際には、モデルの予測する不適切な動作の場合分け区分を指標に、正しい強度を持つようにDNA配列を調整する。このように、数理モデルに基づいたシステムの構築とブラッシュアップが可能である点が、合成生物学が効率的に研究を進められる利点であることを、これまで応募者は示しており、本研究でも必要に応じて活用する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ポジティブフィードバックによる過度な活性化を防止するリミッターの実装に関する実験について、当初予想しなかった困難が生じたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、実験に関する消耗品に対して使用する。
|