本研究では、新しいメディア利用の調査を通じて、ケニア内における国内的格差と国際的格差に対して、携帯電話の普及の影響があるかどうかの確認をおこなってきた。具体的には、ケニア北西部トゥルカナ県の小学生を対象として、メディアの利用と若年層の社会構想、ライフコースやキャリア選択との連関を調査した。その結果、トゥルカナでは、携帯電話のような安価なコミュニケーションメディアであっても、全員が使用しているというわけではなく、家長のみが使用しているという傾向にあることがわかった。若者がそのようなメディアを日常的に接触することは難しく、メディアリテラシー涵養以前の状態だといえる。学校の状況においても、インターネットなどにアクセスする環境は整っていないため、メディア教育をおこなう物的基盤がないという状況を確認した。 一方で、小学生たちの生活の状況は10年前と比較すると著しく改善されており、栄養の問題などはクリアされつつあった。また、小学生たちの将来への希望もヒアリングすることができた。トゥルカナの県庁所在地であるロドワは、周辺における石油の発見によって、急激な都市化を始めている。10年間で車両の数が急激に増えており、これまでは珍しかったモーターバイクの数も激増している。また、建設ラッシュが起こり、ケニア国内から人々が流入していることも確認できた。この都市化の傾向によって、子供たちがさまざまな文化に触れ、このことが将来へのイメージとつながっているのではないかという仮説が導出できた。オールドメディアである都市の機能について、動的なフィールドワークをおこなったといえる。
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