研究課題/領域番号 |
26540181
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
堀口 知也 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 教授 (00294257)
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研究分担者 |
平嶋 宗 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10238355)
東本 崇仁 東京理科大学, 工学部, 助教 (10508435)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 知的学習支援システム / 科学教育 / モデリング / シミュレーション / 知識工学 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
研究代表者らはこれまで,学習者の作成した誤ったモデルの振る舞いに対する適応的説明能力を持つモデリング学習環境を開発してきた.同環境は,非単調推論に基づく制約処理により,通常は計算不可能なモデルの振る舞いをもシミュレートすると共に,誤った振る舞いが物理的に何を意味するかを説明する能力を持つ.これらの新しい機能により,学習者が自己の仮説を「モデル」として自由に表現し,その帰結を適切な説明と共に受け取る「思考実験型の学習」が可能となる.これを基盤として,本研究では,本環境を用いて効果的な思考実験型学習を実現・展開するための方法論を確立すること,本環境における活動が学習者の誤概念をどのように変容させるかを解明すること,を目的として(1)本モデリング学習環境の改良と機能拡充,(2)システムの試験的・実験的利用のための教材の検討と作成,(3)試験的・実験的利用の実施,(4)その結果に基づく「思考実験型学習」方法論の定式化と概念変容プロセスのモデル化,を進めている. 平成26年度は,上記の(1)および(2)を実施した.まず,現在のシステムのインターフェースを学習実験に耐え得るように強化し,また基本的な部品やその組合せ方に関するオンラインヘルプおよび文法チェッカを実装した.さらに,学習実験における種々のデータを収集・分析する機能(システムの操作ログおよびモデル変更履歴の自動記録)を実装した.次に,システムの試験的・実験的利用のための教材,すなわち初学者用チュートリアルおよび種々の難易度の課題を作成した.さらに,大学生8名を被験者として試験的運用を行い,新たに実装した機能が支障なく動作することを確認すると共に,収集したデータを分析して運用上の問題点の抽出および学習プロセスのモデル化に関する予備的検討を行った.いずれも良好な結果を得ており,平成27年度の計画実施へ向けての準備は整ったと言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では(1)研究代表者らが従来開発してきたモデリング学習環境の改良と機能拡充,(2)システムの試験的・実験的利用のための教材の検討と作成,(3)試験的・実験的利用の実施,(4)その結果に基づく「思考実験型学習」方法論の定式化と概念変容プロセスのモデル化,を計画している.これらのうち,平成26年度は(1)および(2)の実施を予定していたが,「研究実績の概要」に記載した通り,これらは順調に完了した.予定していた支援機能の一部は,検討の結果必要性が小さいと判断され実装を取りやめたが,本格運用に支障をきたすものでは勿論ない.また,本来平成27年度に予定していた試験的運用の一部を前倒しして実施するなど,予定よりも進んでいる項目もある.これらを総合的に判断した結果,本研究はおおむね順調に進んでいると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の成果を基に,平成27年度は(3)試験的・実験的利用の実施,(4)その結果に基づく「思考実験型学習」方法論の定式化と概念変容プロセスのモデル化,を行っていく.(3)に関しては,引き続き大学生を被験者とした実験的利用を行い,フィードバックや時間遅れを含む系などの難度の高い課題における学習効果を測定すると共に,発話思考法を用いて,被験者が誤りを修正していく過程のデータを収集する.また,研究分担者および研究協力者の協力を得て,中学生を対象とした試験的利用を行い,課題の難易度や適切性,授業の進め方や支援・介入の仕方などに関して,教育現場におけるデータを幅広く収集する.(4)に関しては,システムの試験的・実験的利用を通して得られたデータの分析により,「思考実験型の学習」が実現されたのかどうか,学習の促進/阻害要因は何か,学習効果はどうであったか,を明らかにする.その結果を,システムの機能,課題と教材,教示と支援,学習者,評価法の観点から総括し,「思考実験型学習」実施への方法論として定式化する.また,「思考実験型の学習」が概念変容に貢献していると言えるのか,貢献しているとすればどのように貢献しているのか,何が促進要因になっているのか,をデータ分析から明らかにする.
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