研究課題
研究代表者らはこれまで,学習者の作成した誤ったモデルに対する適応的説明能力を持つモデリング学習環境を開発してきた.同環境は,非単調推論に基づく制約処理により,通常は計算不可能なモデルの振る舞いをもシミュレートでき,かつその物理的意味を説明する能力を持つ.これにより,学習者が自己の仮説を「モデル」として自由に表現し,その帰結を適切な説明と共に受け取る「思考実験型の学習」が可能となる.本環境を基盤として,本研究では効果的な思考実験型学習を実現するための方法論を確立すること,本環境での活動が学習者の誤概念をどのように変容させるかを解明することを目的として(1)本環境の改良と機能拡充,(2)システムの試験的・実験的利用のための教材作成,(3)試験的・実験的利用の実施,(4)その結果に基づく「思考実験型学習」方法論の定式化と概念変容プロセスのモデル化,を進めてきた.平成26年度は上記の(1)および(2)を計画通り完了し,平成27年度は(3)および(4)を実施した.当初,大学生と中学生を対象とする予定であったが,前年度の予備実験(対象は大学生)の結果から,さらに詳細なデータを追加収集する必要があることが判明した.中学生用のシステム・インターフェースの開発および教材作成に係る作業量が計画を超えたものになることが判明したこともあり,研究代表者・分担者間で検討した結果,今回は大学生に関する実験とデータ収集を集中的に行うこととした.大学生のみの実験でも学習プロセスのモデル化は問題なく行え,かつその結果を「思考実験型学習」方法論へと展開することは可能であるとの判断に基づくものである.その結果,「思考実験型学習」方法論への端緒となる,モデリングを通した学習プロセスの一端を明らかにすることができた.よって,本研究は当初の目的を概ね達成することができたと言える.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)
Research and Practice in Technology Enhanced Learning (Springer)
巻: 10 ページ: online Journal
10.1007.s41039-015-0002-4