研究課題/領域番号 |
26550002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡辺 力 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60353918)
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研究分担者 |
下山 宏 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (50391115)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | PIV / 乱流 / 接地境界層 / 空間構造 / その場観測 / 可視化 |
研究実績の概要 |
本研究は、風洞等における流れを可視化して速度を計測する手法であるPIV(Particle Image Velocimetry)法を応用し、これまで観測できなかった、安定接地境界層における小スケールの乱流現象を面的に捉える手法を開発し、検証することを主目的としている。本年度の成果は以下のとおりである。 (1)PIV装置の開発 屋外の風にPIVを適用するため、広範囲にトレーサ粒子を散布することのできるシーディング装置を開発した。長さ2m幅40cm程度のプラスチック製ダンボール板の断面をトレーサの排出口として用いることで、流れを過度に乱さず一様な散布を可能にし、粒子の生成装置と排出口の間を長さ20m程度の蛇腹ホースで連結することにより、観測現場での速やかな移動・展開を可能にした。本装置を用いて予備実験を行ったところ、レーザシート光によって照射される平面を斜め上方から撮影する手法が非常に有効であり、十分な明るさをもつ画像が取得できることがわかった。しかし、計測実施中に生じる風向変動にともない、トレーサの大半が撮影範囲外へ流れてしまうことにより、映像が途切れる場合があり、対応策の検討が必要となった。 (2)解析手法及びソフトウェア開発 上のようにして得られる画像から、射影変換や画像相関によってトレーサの移動量(一定時間間隔での)を求めるコードを開発した。アルゴリズムに、大域的な移動方向を最初に求め、次第に精密な移動ベクトルを算出する再帰的な手法を取り入れることで、不確実さを低減させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PIV計測を屋外で実施するため、可搬性が高く広範囲にトレーサ散布することのできる装置を開発し、テスト観測を実施し、安定した運転が可能なことを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に実施した予備実験では、計測実施中に生じる風向の変動により、トレーサが撮影範囲外へ流れてしまう場合があり、対応策を検討することが必要となった。そのため、トレーサの排出装置を追加制作することにより散布範囲の拡大を試みる。また、安定成層時に比較的風向が安定する傾斜地で観測を実施することで、連続的に安定した映像を取得することを目指す。いずれの観測においても、複数台の超音波風速計による同時計測を実施することにより、PIVによる風速推定値の検証を行いながら、推定アルゴリズムの改良を重ねる。こうして得られる観測データから、安定接地境界層における特徴的な乱流構造を可視化し、その空間分布や時間変動を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、解析アルゴリズムの開発に北海道大学情報基盤センターの計算機を利用する予定であったが、基本アルゴリズムの開発には研究室で所有しているワークステーションの性能で十分あった。予定していた計算機使用料が発生しなかったため、当該助成金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
新規に制作するトレーサ排出装置の制作にかかる費用や、観測実施のための観測資材調達費を主として使用する。
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