(1)PIV装置の開発 屋外の風にPIVを適用するため、広範囲にトレーサ粒子を散布することのできるシーディング装置を開発した。長さ2m幅40cm程度のプラスチック製ダンボール板の断面をトレーサの排出口として用いることで、流れを過度に乱さず一様な散布を可能にし、粒子の生成装置と排出口の間を長さ20m程度の蛇腹ホースで連結することにより、観測現場での速やかな移動・展開を可能にした。また、複数のシーディング装置を、撮影エリアを中心とする風上側の円弧上に配置するとともに、測量用三脚を用いた可搬性の高い設置方式を採ることにより、大きな風向変動にも対応できるようにした。 (2)解析の手法及びソフトウェア開発 現場で撮影される動画から、射影変換や画像相関によってトレーサの移動速度を算出するコードを開発した。解析アルゴリズムには、大域的な移動方向を最初に求め、次第に精密な移動ベクトルを算出する再帰的な手法を取り入れた。また、画像内の解析対象外の領域にマスキングを施した上で画像相関の計算を行うが、計算速度を向上させるために次のような高速化を施した。即ち、複数コアのCPUを使う場合には、相関係数の計算をFFTを用いて高速化した上でOpenMPによる並列化を行い、GPUが使える環境では、直接法による相関係数の計算をC++AMP言語によりGPU上で並列計算できるようにした。 (3)乱流水平構造の計測実験 開発されたシステムを用い、札幌市羊ヶ丘にある北海道農業研究センター内の牧草地において、乱流水平構造の計測実験を行った。その結果、超音波風速計との比較より、本研究のPIV観測手法の妥当性が検証されるとともに、安定接地境界層における特徴的な乱流構造を可視化計測することができた。
|