平成27年度は、前年度に確立した細菌二次生産の評価方法を用いて、印旛沼における細菌二次生産の季節変化を解析した。また、印旛沼微生物ループを駆動する溶存有機物の起源として、主要なCOD負荷源である鹿島川に着目し、河川水中の溶存有機物に応答する湖沼細菌群を調査した。平成27年6月、10月、平成28年1月に印旛沼及び鹿島川において採水を行った。湖水中の原生生物をろ過によって除外し、無菌湖水で全菌数を1/10に希釈した系を調製し、暗所、採水時の水温で静置培養を行った。一方、鹿島川河川水についてはろ過滅菌を行い、植種源として原生生物を除外した湖水試料を添加して同様の実験を行った。 全菌数の変化から、全菌数の最大増加数と最大比増加速度を算定した。その結果、最大増加数、最大比増加速度ともに10月>6月>1月という傾向を示し、必ずしも水温の傾向とは一致しなかったが、1月の最大比増加速度は他の月の1/2未満であり、細菌の二次生産速度が低下していたことが推察された。鹿島川河川水中での湖沼細菌の最大増加数は、常に湖水中での最大増加数よりもわずかに上回っており、湖内滞留期間における生分解性有機物の分解が推察された。また、6月と1月については、河川水中の最大比増加速度は湖沼での観測値と同程度であった。次世代シーケンサーを用いて細菌群集構造を解析した結果、いずれの月においても、Burkholderiales目が全菌数の傾向と一致した挙動を示した。また、鹿島川河川水中の溶存有機物に応答した細菌群も、湖水同様にBurkholderiales目であった。これらのことから、印旛沼では季節にかかわらず、Burkholderiales目が細菌二次生産を担っていること、その生産を支える溶存有機物の起源の一つとして鹿島川がありうることが推察された。
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