研究課題/領域番号 |
26550004
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
木庭 啓介 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90311745)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 物質循環・フラックス / 環境分析 / 生物圏現象 / 自然現象観測・予測 / アナモックス / 同位体分別 |
研究実績の概要 |
自然界で安定同位体比の情報から脱窒とアナモックスの相対的な強度を解析するためには,同位体分別係数の情報が必須である。しかし,アナモックス反応における同位体分別についてはBrunner et al. 2013 PNASが唯一の報告例であり,そこではまれな窒素逆同位体分別が報告されている。そこで本研究では,アナモックスを含む活性汚泥の室内培養によって,窒素同位体比,そして世界初である酸素同位体比の測定を試み,同位体分別係数の推定を行った。
嫌気培養に苦労しなかなかデータが出なかったものの,アナモックス活性汚泥の培養によるアナモックス活性の検出に成功した。そして最終的にはアンモニウム,亜硝酸イオンの消費においては通常の同位体分別が,そして先行研究と同様に硝酸イオンの生成で逆同位体分別が窒素について観測された。さらに,亜硝酸イオンについて通常の同位体分別が,そして硝酸イオンについては窒素と同様に逆同位体分別が酸素同位体についても確認できた。しかし,活性汚泥ではアナモックス反応と同時に脱窒も生じていると考えられる。そこでこれまで報告されているアナモックスのストイキオメトリー(アンモニウムイオンと亜硝酸イオンの消費割合,そして硝酸イオンの生成割合)をベースとしたシミュレーションモデルを作成し,脱窒が同時に生じていた場合での同位体分別係数を計算したが,硝酸イオンについての逆同位体分別は窒素についても酸素についても変わらなかった。今後,まずはこの成果を5月の学会にて発表し,共同研究者と議論の上,酸素同位体比の決定要因を明らかにする追加実験(培地の水の酸素同位体比を変化させた実験,15N,18Oラベル化合物を行いたトレーサー実験)を平行して行い,可及的速やかに論文として国際学術雑誌への掲載へと進めてゆく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに当初の目標である窒素同位体比と酸素同位体比の分別について一定の知見を得る事ができた。この結果については5月の学会にて発表を行う予定である。2年めで詰めの実験を行うという予定は当初の予定通りであり,順調に研究が進んでいると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
酸素同位体比の測定はきわめて困難であり,サンプルの処理方法を慎重に検討する必要がある。また,より信頼性の高いデータを得るために,繰りかえし数を増やす必要がある。これらについては本年度前半でサンプル保存方法・中和方法の再検討を行うこと,培養を嫌気チャンバー下ではなく,ガスを導入しながら嫌気的に培養する方法に変更することで繰り返し処理を行いやすくするなどの対応をすでに検討済みであり,問題はない。また,硝酸イオンの生成プロセスを明確にするために,15Nおよび18Oでラベルされたあ硝酸イオンなどを用いたトレーサー実験も平行して行い,論文化に十分なデータを得る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった嫌気チャンバーについて,H26年度は学内での借用が可能であったため,その余剰分が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度は嫌気チャンバーだけでなくより多くの試料を扱うために連続ガスフロー型小型培養システムを組み立てるために,その予算に利用する。安価に組み立てるために自前で調達するので消耗品として余剰分の予算は利用する予定である。
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