研究課題/領域番号 |
26550007
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
小松 大祐 東海大学, 海洋学部, 講師 (70422011)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 硝酸 / 安定同位体 |
研究実績の概要 |
従来の硝酸の同位体分析法では、塩化カドミウムを亜鉛棒状に析出させたスポンジ状の純カドミウムによって亜硝酸に還元した後、アジ化水素によって亜酸化窒素(N2O)に変換し、同位体分析を行っていた。今年度は従来法の二つの大きな問題点だった、①高感度分析の妨げとなる高いN2Oブランクの低減、②2日間以上かかる反応時間の短縮、について検討した。 硝酸の同位体分析法におけるブランクの発生源について、亜硝酸をN2O化する際に30nM程度のN2Oブランクが発生することがわかった。さらに、硝酸還元時にも同程度の亜硝酸ブランクが発生することがわかり、何度も再利用するスポンジ状のカドミウムが大きなブランク源となっている可能性が高いことがわかった。また、カドミウムによる硝酸還元反応は12時間以上かかることから、ブランクの低減と同時に硝酸還元反応時間の短縮を目指し、他の還元剤の検討を行った。 新たな還元剤として、金属亜鉛、塩化バナジウム、銅コーティングを施した粒状カドミウムを検討した。金属亜鉛は数分で半分の量を還元するほど還元反応が早い反面、pH6 以下でのみ反応が進むこと、硝酸還元で生成した亜硝酸も還元すること過還元がおこり反応収率が悪いことから、本研究の目的には適さなかった。塩化バナジウム溶液を用いた反応は、固体の金属ではなく溶液を用いるため、実験操作が簡便であるが、亜鉛と同様に過還元の問題が生じた。銅コーティングを施した粒状カドミウムは、pH条件を整えることによって従来法に比べ1/8程度の時間で反応させられることが分かった。また数時間では有意な過還元の問題も生じないことも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
従来法の改良を試み、ブランクの低減と反応時間の短縮について、ある程度は達成できた。また、予定を前倒しして、GEOTRACES計画で行われた白鳳丸航海、自大学の実習航海などを利用し、亜熱帯海域における試料を採取する機会を得た。さらに亜熱帯海域において擬似現場培養についても複数回実施することができ、十分な観測ができた。ただし、自大学において硝酸濃度の高感度分析は可能であるものの、硝酸同位体分析を行う研究設備が整備できていない点が問題である。初年度の物品購入によって研究設備を構築し始めているが、恒常的に得た試料をデータ化する体制になっていない点が課題である。
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今後の研究の推進方策 |
新たに自大学に構築した硝酸同位体分析を行う研究設備について十分なテストを行い、従来法を上回る高感度硝酸同位体分析を実現したい。また塩化バナジウムを用いた硝酸濃度定量法、銅コーティングを施した粒状カドミウムを用いた従来法の改良についてそれぞれ論文を通じて公表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
製作を依頼し、購入予定だった金を蒸着させたチューブの製作、納品が遅れているためである。チューブの製作及び購入代金である十数万円の使用用途を納期に合わせて次年度に回したことによって、今年度使用額が予定よりも少なくなった。 硝酸の三酸素同位体分析では、硝酸を亜酸化窒素に変換した後、800度程度の炉において酸素に熱分解する必要がある。この反応を金のチューブ内で行う必要があるため、金のチューブを新たに購入予定でいた。しかし現在、金相場が非常に高く、金そのものでチューブを作ると高価であった。そのため、高温に強い合金で作ったチューブの内側に金を蒸着させる方法で新たに製作を依頼中である。ただし、業者でも初めての試みであったため、26年度内には間に合わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本来は昨年度購入予定だった、亜酸化窒素を酸素に変換するためのチューブの製作及び購入代金に使用する予定である。
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