研究課題
従来の硝酸の同位体分析法では、塩化カドミウムを亜鉛棒状に析出させたスポンジ状の純カドミウムによって亜硝酸に還元した後、アジ化水素によって亜酸化窒素(N2O)に変換し、同位体分析を行っていた。初年度に従来法の改良を試み、硝酸還元に粒状カドミウムに銅コーティングを施すこと、pHを細かく調整することによって、ブランクの低減と反応時間の短縮をある程度達成できた。今年度は自大学で硝酸の同位体分析を可能にするため、設備の整備を進めた。自大学の既存設備であるガスクロマトグラフ(Agilent Technology:6890)と同位体質量分析計(Isoprime 100)を組み合わせ、連続フロー型質量分析法を応用しN2Oの安定同位体の自動定量システムの構築を目指した。システムはN2Oを濃縮するための真空ライン、ヘリウムキャリア中で液体窒素を用いてN2Oを濃縮するトラップ部、試料中に共存する同重体であるCO2と完全分離を行うキャピラリーカラム、高真空の質量分析計との接続を可能にするオープンスプリット部分からなる。構築したシステムについて性能試験を行い、測定時間、GC流速などを変化させ、感度、精度、測定時間について最適な条件を探した。その結果、窒素・酸素安定同位体組成について従来と同等の感度、精度を得られることが分かった。ただし、質量分析計Isoprime 100は室温、湿度の影響を強く受け、測定値が変動する割合が大きいため、高精度の同位体分析を行うには、従来よりも頻繁に標準物質を導入し、かつ測定時間を短くする必要があることが分かった。また、硝酸濃度についても更なる高感度化を目指し、塩化バナジウムを用いた還元方法について改良を加え、従来比で1/8の塩化バナジウム濃度、1/4に相当する3時間で硝酸還元を完了できることが分かった。これにより0.2 μmol/L程度の低濃度の硝酸分析可能になった。
3: やや遅れている
従来法の改良を試み、ブランクの低減と反応時間の短縮について、ある程度は達成できた。また、予定を前倒しして、GEOTRACES計画で行われた白鳳丸航海、自大学の実習航海などを利用し、亜熱帯海域における試料を採取する機会を得た。さらに亜熱帯海域において擬似現場培養についても複数回実施することができ、十分な観測ができた。また、自大学において硝酸同位体分析を行う研究設備を整備した。しかし、三酸素同位体組成については研究設備を構築している途上であるため、次年度の課題である。
自大学に構築した硝酸同位体分析を行う研究設備について改良を加え、硝酸の三酸素同位体組成について定量可能な体制を整備したい。また、毎年のようにスキルの十分でない学生が入れ替わる大学においても高精度な同位体分析を実現するため、可能な限り定量システムの自動化を進め、恒常的に同位体分析を行う研究設備を整備していきたい。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Environmental Microbiology Reports
巻: 8 ページ: 285-294
10.1111/1758-2229.12379
Deep-Sea Research Part II
巻: 121 ページ: 62-70
10.1016/j.dsr2.2015.06.004