研究課題
2015年7~10月に実施された新青丸KS-15-6次航海および白鳳丸KH-15-3・KH-15-4次航海において、陸由来の微量金属供給の影響を受けやすい黒潮域や東シナ海陸棚海域で観測を行った。亜表層クロロフィル極大層の直下付近に形成された亜硝酸塩極大の発達状況を確認するとともに、鉄、銅、亜鉛などの微量金属の鉛直分布構造との対応関係を把握した。2014~2015年度の2カ年の研究期間全体を通して得られた現場観測結果と船上培養実験結果の解析から、亜熱帯域および亜寒帯域のいずれにおいても、亜表層クロロフィル極大層付近において、真核藻類などの植物プランクトン群集は強い鉄制限を受けていること、溶存鉄だけでなく溶存亜鉛濃度も低くなっているが、亜鉛など鉄以外の微量金属による植物プランクトン群集の増殖制限は明確に認められないこと、鉄供給により現場プランクトン群集による硝酸塩の消費が増大することなどが示された。このため、海洋亜表層における窒素循環に関する仮説の中で、鉄欠乏に伴う植物プランクトンの硝酸塩代謝の阻害が亜硝酸塩の細胞外放出を促し、亜硝酸塩極大の形成に寄与している可能性が強まった。但し、鉄供給に対する植物プランクトンの増殖応答については真核藻類とシネココッカスなどのシアノバクテリアの間で違いが見られたことから、今後は、植物プランクトンと硝化細菌・古細菌との相互作用だけでなく、植物プランクトン群集内についても鉄獲得に関する競合関係を考慮した観測・実験を実施し、微生物群による硝化作用と植物プランクトン群集による亜硝酸塩放出の相対的な寄与を定量的に解析していく必要がある。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Biogeosciences
巻: 12 ページ: 6931-6943
10.5194/bg-12-6931-2015