研究課題/領域番号 |
26550012
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
浅海 竜司 琉球大学, 理学部, 准教授 (00400242)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 硬骨海綿 / サンゴ礁 / 環境解析 / 水温 / 塩分 |
研究実績の概要 |
地球環境の変動を理解するためには,地質試料を用いた古環境解析が重要な手法の一つである.本研究では,琉球列島サンゴ礁域の表層~水深100mに生息する硬骨海綿について,骨格の各種化学組成を高時間分解能で分析し,海洋環境指標(プロキシ)の有用性を評価するとともに,Newプロキシとなる元素(同位体)を探求することを目的とする.そして,サンゴやシャコガイのデータとの解析から,琉球海域表層~水深100mにおける水温と塩分の長期変動の類似性と相違性を明らかにすることを目指している. 本年度は,現地調査によって硬骨海綿の生息場の環境モニタリングを実施し,環境水試料や硬骨海綿試料を採取した.採取試料を切断整形した後,デジタルX線画像撮影による骨格成長輪構造を解析した.その結果,明瞭な成長輪がみられ,その幅は数百マイクロメートルであることが確認された.昨年度確立した微小空間マイクロサンプリングの手法を用いて,骨格の安定酸素炭素同位体組成を分析した.その結果,硬骨海綿は同位体平衡で骨格を形成するため環境プロキシとして有用であることを確認した.また,本研究試料から過去数百年の時系列データを構築し,サンゴ骨格年輪と比較解析を実施した.放射性同位体年代測定を実施したものの,高精度の年代値が得られなかった.今後,正確な形成年代の推定について検討と対策が必要と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,概ね2015年度研究実施計画どおりに進められた.具体的な理由は,1)昨年天候不良のため延期していた現地調査を実施することができ,現場環境モニタリングを開始できたこと,2)昨年度に確立した一連の解析手法(試料整形―X線画像による成長輪解析―微小領域マイクロサンプリング-安定同位体組成分析)をベースに,数多くの硬骨海綿試料を分析し膨大なデータを得たこと,3)データ解析から得られた成果の一部を学会で発表したこと,である.なお,レーザーアブレーションシステムに不具合が生じたため,微量元素分析を当初の計画通り実施できなかった.この点では進捗状況に遅れがあるものの,それ以外の研究項目で膨大な基礎データが蓄積されたことから,本研究は概ね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
基本的に2015年度の研究実施計画どおりに進める予定である.野外調査,試料整形,縞構造解析,化学分析を推進する.特に,分析値の高精度時系列データを構築するために,ウラン系列年代測定および放射性炭素年代測定を推進する.レーザーアブレーションシステムが復旧し次第,微量元素組成の高解像度分析を開始するが,装置不良が継続する事態を踏まえ,他の研究機関で実施できるよう調整する,または,湿式法によるICP分析を試みる.得られた成果は国際学術雑誌に投稿するとともに,国内外の学会で発表する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
天候等々の理由により現地調査の実施回数が予定より少なかったこと,また,放射性同位体測定に適した試料数が当初の予定より少なかったことが理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額は,現地調査ならびに放射性同位体年代測定費に使用する予定である.
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