琉球列島サンゴ礁域の表層~水深数十mに生息する硬骨海綿について,海洋環境指標(プロキシ)の有用性を評価し,長期の海洋変動を復元することを目的とし,現地調査による環境モニタリングと試料採取,地球化学的分析を実施した.その結果,骨格の同位体組成は同一個体内および個体差が小さく,平衡炭酸塩の理論値と一致することが明らかになった.放射性同位体年代測定から構築された過去150年間の炭素および酸素同位体組成の時系列は,海洋中への人為起源二酸化炭素および水温・塩分の変化を示した.硬骨海綿に基づく古環境情報は,浅海域の海洋生物の記録と併せることで,過去の海洋環境を空間的に復元できると期待される.
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