研究課題
硫酸エアロゾルは、温暖化を抑制する気候フィードバックに関与する物質として注目を集めている。しかし、実際に気候変動が起こった際にどのようなフィードバックが起こるのかについては不明な点が多い。本研究では、硫酸エアロゾルの硫黄の安定同位体比を用いて、最終氷期から現在の温暖期にかけての気候フィードバック機構を明らかにすることを目指す。本年度は、本年度の計画である以下の3点について研究を実施した。(1)硫黄同位体比測定法の改良:初年度に構築した複数試料を同時に処理するシステムを用いて(2)と(3)を実施した。(2)南極氷床上の同位体分布の解明:南極氷床上での、第53次南極観測隊が採取した表層積雪サンプルの硫黄同位体比を測定した。この結果は、沿岸から内陸にかけての硫黄同位体比の分布を明らかにした初めてのデータである。硫黄同位体比は、予想よりも均一であり、従来予想されていた輸送過程における同位体分別の効果の影響は極めて小さいことを示唆していた。また、硫黄同位体の値は、海洋生物活動に由来する硫黄が現在の東南極氷床の硫酸エアロゾルの主要な起源であることを示唆していた。この結果は、国際誌に論文として公表した。(3)アイスコアの測定による気候変動プロセスの解明昨年度に引き続き、南極ドームふじアイスコアの硫黄同位体比測定を行い、測定結果を得た。現在、(2)の結果と合わせて、得られたデータの解析を進めており、今後成果を公表していく計画である。
2: おおむね順調に進展している
南極の雪、アイスコア試料の処理と同位体比測定は終了し、全般として順調に進展しているため。
昨年度までに得られたデータの解析と成果報告に重点をおいて研究を推進する。
本計画は(1)南極積雪と(2)アイスコアの測定と解析を行う計画であった。このうち(1)については、測定と解析が終了し、論文として公表することができた。しかし、(2)については試料の測定は終了したが、データ解析は現在も進めている状況である。そのため成果発表のための論文投稿、学会発表などを来年度に行うことになった。
主として成果の発表のため論文投稿、学会発表等に使用する計画である。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
Geophysical Research Letters
巻: 43 ページ: 5878-5885
doi:10.1002/2016GL069482
The Cryosphere
巻: 10 ページ: 837-852
doi:10.5194/tc-10-837-2016