研究課題
硫酸エアロゾルは、温暖化を抑制する気候フィードバックに関与する物質として注目を集めている。しかし、実際に気候変動が起こった際にどのようなフィードバックが起こるのかについては不明な点が多い。本研究では、硫酸エアロゾルの硫黄の安定同位体比を用いて、最終氷期から現在の温暖期にかけての気候フィードバック機構を明らかにすることを目指す。昨年度までに、複数試料を同時に処理するシステムを構築し硫黄同位体比分析を進めてきた。初めに、現在の南極氷床上の同位体分布については、第53次南極観測隊が採取した表層積雪サンプルの硫黄同位体比を測定した。硫黄同位体比は、予想よりも均一であり、海洋生物活動に由来する硫黄が主要な起源であることを示した。この結果は、国際誌に論文として公表した。また、同試料の一部を用いて硝酸の同位体比分布も明らかにし、本年度に論文として発表した。これらの結果を踏まえ、アイスコアの測定による氷期-間氷期スケールの気候変動プロセスの解明についての解析を行った。前年度までに主要な分析は終了していたが、本年度は追加分析と成果公表のために経費の一部を残して補助事業期間を延長して実施した。気候変動の重要な指標である気温と海水温の復元に関しては国際誌に成果を公表した。硫黄同位体比の氷期サイクルの変動については、これまでの研究例よりも高い時間分解能で計画通りのデータを取得することに成功した。南極ドームふじアイスコアのデータ解析を行い、他の指標(火山噴火、非海塩カルシウム等)と組み合わせることで定量的に起源変動を推定する手法を考案し、シンポジウムで発表を行った。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Nature Communications
巻: 9 ページ: 961
10.1038/s41467-018-03328-3
Geochemical Journal
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