昨年度までに引き続きマレーシア国サラワク州(ボルネオ島)のランビルヒルズ国立公園において、塩化メチル放出量の樹種間差に関する調査を実施した。熱帯樹木の葉群には高さ80mの林冠クレーンに吊るされたゴンドラを用いてアクセスし、植物葉群をバッグで覆うブランチエンクロージャー法によるガスの採取と葉群の採取を行った。葉群からの塩化メチル放出量はShorea beccarianaで最も高く(~数百ng/g leaf dw/h)、Dryobalanops aromatica、Shorea ovata、Shorea ochraceaがそれに続いた。いずれもフタバガキ科の高木でランビルの主要樹種である。放出量の測定は約20種の熱帯樹木について行ったが、フタバガキ科以外の樹木からは塩化メチルの放出はほとんど認められなかった。樹木葉中の塩化物イオン濃度(葉の乾燥重量当たり)は数十~数千 ug/g leaf dwで変動したが、塩化メチル放出量との間に有意な相関は見られなかった。一方、葉に含まれる水分を考慮し、塩化物イオン濃度を葉内水分当たりで求めたところ、塩化メチル放出量との間に相関が見られ、塩化物イオンの濃縮が塩化メチル放出量の規定要因の一つであることが示唆された。
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