研究課題/領域番号 |
26550019
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
塚崎 あゆみ 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 環境管理研究部門, 研究員 (40585402)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海洋有機物 / 糖鎖 / ペプチド鎖 / 物質循環 |
研究実績の概要 |
本研究は、糖ペプチドの働きによって海洋有機物が分解酵素から保護され海水中に蓄積するという仮説を立て、糖ペプチドの化学的性質を明らかにすることで糖ペプチドが海洋有機物の蓄積に果たす役割の解明を行うことを目的としている。海洋有機物の分解過程の初期段階に位置する海洋表層懸濁態有機物に含まれる糖ペプチドの構造解明をおこなうため、平成27年度は名古屋大学より提供いただいた伊勢湾および赤道域の表層懸濁態有機物試料を粉砕・均質化して得た海洋有機物試料の粉末ストックを全実験に使用した。粉末ストックを有機炭素および窒素分析および加水分解後の単糖組成分析に供し、海洋有機物含有量の基礎データを得た。続いて海洋有機物試料に含まれる糖鎖の検出方法に関する検討を行った。まず、界面活性剤や尿素などの抽出液をもちいて懸濁態有機物粉末試料から糖ペプチドを抽出し、濃縮・精製法の検討を行った。つづいて、精製した糖ペプチド試料について糖鎖の還元末端を8-Aminonaphthalene-1,3,6-trisulfonic acid(ANTS)により蛍光標識するとともに負の電荷をもたせることで、電気泳動による糖鎖の分離・検出を試みた。その結果、懸濁態有機物に含まれる糖鎖の可視化に成功し、懸濁態有機物の尿素で可溶化される画分にグルコースが3から13繋がった分子に相当するサイズの糖鎖が、何の修飾も受けず、糖のみで鎖をなして存在することが明らかになった。本研究によって得られた成果は2016年2月米国ニューオーリンズで開催された国際学会、Ocean Sciences Meeting 2016にて研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度に海洋表層懸濁態有機物の収集に時間を要し計画変更があったことで遅れがでたことから、今年度も引き続き申請時の計画からはやや遅れが生じている。しかし昨年計画変更により修正した平成27年度の計画はおおむね達成し、国際学会での研究発表を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き同海洋有機物の粉末ストックを用いて糖鎖の分析を進める。平成27年度に行った糖鎖検出法の検討で修飾を受けていない糖鎖については検出が可能となったので、種々の酵素・酸をもちいて糖鎖とペプチド鎖の切断法の検討を行い、ペプチド鎖に修飾されている糖鎖の分離検出を行い、糖ペプチドの化学的性質の解明を行い、普遍的な海洋有機物の残存メカニズムとして糖ペプチドが機能しているのか否か明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に生じた計画の遅れに伴い、平成26年度から27年度への消耗品費等繰り越し分が発生した。平成27年度でも当初の研究計画はまだ達成しきれていないため、引き続き消耗品費等に繰り越しが発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、糖ペプチドの糖鎖とペプチド鎖の精製に用いる試薬類、分析機器の運用に当たり必要な消耗部品ならびに機器分析に使用する試薬、器具類等、当初の計画で平成27年度に購入予定であったものも含め、繰り越し分と平成28年度分を合わせることで購入する。旅費として、日本海洋学会などで成果発表を行うために交通費および宿泊費の使用を予定している。また、その他の経費としてペプチド鎖のアミノ酸配列決定のための受託分析、学会の参加費等を予定している。
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