研究課題
人為起源的に大気に放出された重金属元素の、地球表層での空間的・時間的変化の把握のため、様々な地質学的・環境学的試料中の僅かな重元素同位体比の変動を指標として、その変化の詳細把握を目的としている。本研究では、とくに第一遷移金属に注目して、天然での同位体存在度の変動幅を決定することを目標としている。重元素の高精度同位体分析が可能になったのは、1995年以降であり、同位体分析法の確立と、化学分離法の確立を行う必要がある。まず上記元素群のひとつ、ニッケルに着目した。ニッケルの高精度同位体分析法については、2006年に研究代表者らにより報告済みであるが、ニッケルを微量にしか含まない試料への適用は困難であった。高精度同位体測定には、目的の元素をさまざまな試料から高純度で単離、および高回収率を達成することが必要である。現在主要な分離手法は、ニッケルとジメチルグリオキシムの間の選択的な結合を利用して有機化合物として抽出する方法であるが、新たに加わる有機化合物を分解するのに一週間以上の時間を要し、迅速な分析法ではない。本研究では、ニッケルと無機酸の間の錯形成に着目し、カラム分離につかう溶液の濃度およびpHの最適化を行った。結果として、従来のイオン交換分離では分離できなかったマグネシウムとニッケルの分離が達成され、新しい方法での分離法の確立に道筋ができた。また銅の高精度同位体分析については、2013年に報告したキレート樹脂を利用した脱塩処理法を海水に応用して、各海域での深度プロファイルの取得に成功した。銅同位体プロファイルはみかけの酸素利用量とよい相関があり、両者の関係について今後考察していく必要がある。
3: やや遅れている
当初、分析試料採取を分担する予定であった研究者2名が、年度途中に同時に異動することになり、当初の予定で研究を進めることが困難になった。そのため、遷移金属の化学分離法に焦点を絞り、実験を進めた。化学分離法の確立は、当初の目標は達成された。
研究代表者の異動に伴い、平成26年度後半はほとんど実験ができない状況であったが、大学に異動したことにより、実験機器の立ち上げに時間がかかるものの、学生を重点的に配置することで、分析手法の確立を平成27年度前半に終了し、実試料の同位体分析に移る予定である。
研究分担者2名の異動により分担者から外れ、当初予定していた分担金の金額が余剰金として発生した。
上記2名に分担者として再び参画していただき、分担金として配分する。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Nature Communications
巻: 5 ページ: -
10.1038/ncomms6663
Chemical Geology
巻: 387 ページ: 87-100
10.1016/j.chemgeo.2014.08.019
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20141205/