研究課題/領域番号 |
26550021
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
宮川 拓真 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球表層物質循環研究分野, 研究員 (30707568)
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研究分担者 |
池田 恒平 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 特別研究員 (60726868)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 炭素分析 / 堆積物中BC含有率 / 人為起源影響 |
研究実績の概要 |
H27年度は1953年から2012年の試料に関して、分析を完了した。2000-2012年から1953-1956年にかけて、堆積物中ブラックカーボン(BC)濃度は~0.5%から~0.1%まで減少していた。排出インベントリ(Lamarque et al. 2010)で見られるような、増加傾向が顕著な1950年代以降の変化が明瞭にとらえられている。年縞別の試料の準備は、一ノ目潟のプロジェクト内との調整から依然として遅れており、1950年より以前にさかのぼる試料の切出しが完了していないが、重要な年代に関しては網羅できている。タービダイト層の分析から一ノ目潟の試料は部分的に地崩れの影響を受けていることが示唆された。慎重にデータの選別を行うことが必要であることが判明した。 BC濃度が希少であることと、使用できる堆積物の量に限度があるため、同位体による起源解析が難しいことがわかってきた。しかしながら、分析の際に同時に定量される加熱により炭化する有機炭素の挙動から定性的に過去から近年に近づくにつれてバイオマス燃焼の寄与が小さくなっていることが分析の結果から示唆された。(この炭化する有機炭素はバイオマス燃焼時に大きな寄与を持つことで知られる。) 全球化学輸送モデルGEOS-ChemのBCの疎水性粒子から親水性粒子への変質過程に新たにパラメタリゼーションを導入し、BCの長距離輸送をより適切にシミュレーションできるようモデルの精緻化を進めた。東アジア域のBC観測と比較を行い、季節変化などモデルの再現性が良好であることを確認した。また、タグ付きBCシミュレーション計算を行えるようモデルの改良を行い、BC濃度・沈着量の発生源別寄与を定量的に評価ができるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標どおり、H27年度までに過去から現在までの堆積物中のBC濃度が増加している傾向が明らかとなった。本計画外であるが、一ノ目潟のコア試料の管理進捗状況の問題から産業革命以前まで十分にさかのぼることはできなかったが、本計画の目的としては現状では大きな問題とはならない。また、H27年度に堆積物の同位体比分析を終える予定であったが、堆積物に対しての同位体比分析が現状では難しいことがわかり、方針を変える必要に迫られた。モデルに関しては、ほぼ順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
世界で唯一の貴重な試料であるので、試料の準備のでき次第継続して分析を行いできる限り過去にまでさかのぼった経年変動を取得する。同位体比分析に関しては、まずは試料量を調節しやすい現世のエアロゾルで有機炭素とブラックカーボンを分離して、同位体分析を行うことを検討している。フィルターにろ過捕集されたエアロゾルを加熱分離するセットアップを作成し、将来的な堆積物試料への適用に向けた準備を行う。 改良したGEOS-Chemを用いて長期計算を行いBC沈着フラックスの長期トレンドとの比較を行い経年変化の要因を調べる。タグ付きBCシミュレーションによって東アジア域のBC濃度・沈着量の長期変動に対する様々な発生源からの寄与を定量的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料の分析にあたって、当初予定していた分析に足る試料量を準備できないことがわかり、貴重な試料を有効活用するために、別の切り口を模索したため未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
同位体分析のための実験装置の製作に使用する。
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