研究課題
対流圏大気中において亜硝酸(HONO)ガスは、光分解することで大気の酸化力を決定するOHラジカルを生成する重要性を持つが、その生成過程や存在高度範囲は把握されていない。本研究では、HONOとその生成に関与する二酸化窒素(NO2)に関して、粗い高度分布を計測するリモート計測法(MAX-DOAS法)と、地上付近の大気の濃度を計測する方法による同時観測から、存在高度範囲と生成過程を解析することを目的とする。これまでに、冬季・夏季において、HONO, NO2の地上・リモート同時集中観測を横須賀において実施し、観測データをとりまとめた。エアロゾル粒子数濃度や光分解速度定数(J値)の測定も同時に行った。MAX-DOAS法では、差分吸収度を求める際に用いる吸収断面積や波長範囲について最適化と不確かさの評価を進めた。HONOの地上計測に用いるLOPAP(LOng Path Absorption Photometer)法では、装置の整備改良や送液の安定化、ガスサンプリングの際のアーティファクト軽減にも注力し、連続測定を実施した。得られた時系列データについて、地上測定法とリモート測定法との比較を行った。冬季のNO2ではMAX-DOAS法から導出した地上量と、地上測定法(CAPS法)での値との一致度が高かったが、夏季にはやや不一致度が高まる傾向があり、MAX-DOAS法での高度分布導出方法に関する改善の指針を得た。HONOについてはNO2と正相関する濃度変動を示し、HONOの生成過程を今後解析するための基礎となる情報を得た。
2: おおむね順調に進展している
難しいと予想されたHONOの地上連続測定を実施でき、冬季・夏季における濃度値を得ることができた。リモート計測と地上測定を統合した濃度高度分布の導出法については、着手した段階であるが、次年度データ解析に集中することで成果を挙げることができる段階に達したと考えられるため。
計測の不確かさを見極め、それを適切に考慮した形で、リモート計測と地上測定を統合して濃度高度分布を導出する。適切な解析期間を選び、重点的な解析を実施することとする。得られた濃度分布を元に、HONOの生成過程について解析を進める。
計測や高度分布導出を安定化させる方法について、検討を重ねる必要が生じ、物品の購入を次年度に実施したほうが成果を充実化することができると考えられたため。
LOPAP法での計測の安定化のため、送液部分の改善について検討を進めた上で、改良のために必要な物品の購入に充てる。また、安定的な高度分布の導出を行うための方法を確立し、ソフトウェア等の物品を購入する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
Atmospheric Chemistry and Physics
巻: 14 ページ: 7909-7927
10.5194/acp-14-7909-2014