研究課題
低線量と中・高線量照射で放射線応答機構が同じかどうかは明らかでない。細胞致死を指標にした低線量域でみられる放射線抵抗性(擬似しきい値、いわゆる細胞生存曲線の肩)を説明するために、物理学的損傷に基づいた標的説やαβモデルが考案された。これに対して、低線量と中・高線量照射でのDNA修復能力の違いにより説明する生物学的なSaturated Repairモデルは1962年に提唱されたが、当時DNA修復能力を実測出来る方法が無かったために長年顧みられることはなかった。本研究は、最新のレポーター遺伝子技術を用いて、低線量と中・高線量照射時の細胞内の相同組み換え修復および非相同末端再結合能を定量することを目的とする。非相同末端再結合能は誤りの多い修復系として知られているので、本研究結果は細胞生存曲線のモデル化に加えて、低線量域での放射線リスク評価の研究にも資すると期待される。レポーター遺伝子を用いて解析した結果、非相同末端再結合能は放射線量によらずほぼ一定したが、相同組換え能は放射線量とともに減少した。減少の程度は、低線量域でみられる放射線抵抗性の放射線量と一致したので、この放射線抵抗性は非相同末端再結合能と相同組換えのいずれも働くことにより放射線抵抗性であることが明らかになった。続いて、高線量域で相同組換えが低下する原因について解析した。非相同末端再結合の鍵タンパクをノックダウンすると相同組換えが回復することから、原因の1つは非相同末端再結合が相同組換えを抑制していることが明らかになった。現在、その抑制機構について解析を進めている。
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