研究課題/領域番号 |
26550029
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
栗政 明弘 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80343276)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | DNA修復 / 放射線 / DNA損傷応答 / 53BP1 / 海馬 / 神経細胞 / タイムラプス / DNA損傷フォーカス |
研究実績の概要 |
生体内で生きたまま細胞内に引き起こされるDNA損傷を検出するために、53BP1-GFPを発現するマウスの解析を行ってきた。これまでの解析では大脳・海馬の神経細胞と網膜の視神経細胞での53BP1-GFPの高発現を認め、それらの組織における蛍光観察法の確立を試みた。 本年度においては、特に生きた組織片として、海馬を振動刃ビブラトームを用いて薄切切片の切り出しを行い、海馬とその周辺組織におけるDNA損傷誘導薬剤ならびに放射線による応答の変化を検討した。まず、グラスボトムディッシュの中で短期間の培養を行った海馬切片において、放射線類似薬剤を投与しながらタイムラプス顕微鏡撮影に成功した。その結果、海馬とその周辺組織である海馬采の細胞において、海馬ではDNA損傷修復応答として通常の細胞で観察される53BP1のフォーカス形成が起きないことが観察された。一方海馬采の細胞では、通常と同様のフォーカス形成がなされていた。 また、マウスに放射線照射を行い、その後に脳組織を切り出してDNA損傷応答の違いを検討した。この結果でも53BP1-GFPのみならず、gammma-H2AXに関しても同様なフォーカス形成の差異が認められている。 このことは、海馬とそれ以外の細胞で、明らかにDNA損傷修復応答が異なることを示しており、小児脳腫瘍患者に対する放射線治療などで観察される副作用の記憶障害等に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの生きた組織内の細胞において、DNA損傷応答を可視化することを試み、海馬と海馬采の異なる細胞において、DNA損傷誘発の放射線類似薬剤および放射線照射によるDNA損傷応答のフォーカス形成に差異があることを見いだしている。今後の課題として、DNA損傷フォーカスをより詳細に明確に可視化する必要があり、培養条件、撮影条件のより細かい検討が必要となっている。また、観察している神経細胞の種別の判定が未だ成功していない点で、今後実験をを進めていく。また、損傷フォーカスのの定量解析がまだ十分でなく、今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
生きた組織における細胞内のDNA損傷を、タイムラプス動画撮影により検出し、フォーカス形成の動態を観察するとともに、より定量性を持ってDNA損傷応答を評価できるシステムの構築を図っていく。また来年度よりは、網膜神経細胞におけるDNA損傷フォーカスのタイムラプス観察を試みていく。これにより、緑内障などによる網膜神経細胞へのストレスで、同様のDNA損傷フォーカスが形成されるかどうかの検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画において、特に神経細胞の同定に必要な免疫染色の段階まで進むことができず、その費用が計上できていない。この研究は翌年度以降に持ち越す予定である。また、学会参加も研究が途中段階であり成果発表までに至らず、翌年度に行う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
免疫染色用の抗体の購入ならびに国内での国際学会参加費用として使用する予定である。
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