研究実績の概要 |
2011年3月に発生した福島原発事故により放出された放射性物質により、広範囲が汚染された。土壌汚染を引き起こした放射性物質の主要成分は、I-132,I-131,Te-132,Te-129,Te-129m, Cs-134,Cs-136,Cs-137であることは、多くの測定で明らかになっている。これまでの研究では、γ線による空間線量等の評価は多く存在するもののβ線による空間線量や皮膚線量の評価は、ほとんど存在しない。しかしながら、上述の放射性核種はγ線のみでなく、β線も放出する放射性核種である。β線による空間線量率は、全身被曝には寄与しないが、皮膚線量(70μm線量当量)に寄与する。したがって、β線由来の空間線量や皮膚線量の評価は、初期の皮膚の被曝や体の小さい昆虫などの被曝を評価する際に必要である。本研究では、沈着放射能からのβ線をモンテカルロ計算を行い皮膚線量を評価するための70μm線量当量の評価を行うことを目的とする。 本研究年度においては、本研究を実施中に着想したレンガ試料を用いた実測によるβ線被曝線量の評価を進めた。レンガ試料は長年共同研究してきたロシアMRRCのステパネンコ教授に測定を依頼し、プレリミナリ―な測定データを得た。その結果では、レンガ表面に高い被曝線量を認め、β線に寄与であることが示唆された。この結果を理解するためモンテカルロ計算を実施し、この高い線量がβ線由来であることを確かめた。これらの結果をもとに、現在論文の準備を進めている。また、土壌中の放射性微粒子中にSr-90が存在することを確かめ、Sr-90からのβ線についても検討を進めている。
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