研究課題/領域番号 |
26550032
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
児玉 靖司 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00195744)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 胎内被ばく / DNA損傷 / 染色体異常 |
研究実績の概要 |
胎齢13.5日、及び14.5日のB6C3F1マウスにX線を2Gy照射し、直後に胎児から神経幹/前駆細胞を採取して2日間培養し、抗γ-H2AX抗体を用いて免疫蛍光染色によりγ-H2AXフォーカスを検出した。また、同様に胎齢13.5日、及び14.5日の胎児にX線照射してから生後6週齢になるまで飼育した成体マウスとそれらの母親由来神経幹/前駆細胞を採取して7日間培養し、γ-H2AXフォーカスを検出した。これらのフォーカス数を顕微鏡下で観察すると、神経幹/前駆細胞の厚みのために、Z軸方向のどの位置で画像を取得するかによって、フォーカス数にバラツキが生じた。このバラツキを少なくするために、Z軸方向に画像をスキャンして全てのフォーカスを撮影し、その後画像解析ソフトウェアを用いて数値化した。最初に検出するのに最適な蛍光強度とピクセル数を決定した。その条件下で、13.5日齢と14.5日齢胎児のX線照射2日後のγ-H2AXフォーカス数を調べたところ、14.5日齢胎児ではX線照射によりフォーカス数が有意に増加するが、13.5日齢胎児では有意差が見られないことがわかった。また、14.5日齢胎児にX線(2Gy)を照射し、生後6週齢まで飼育した成体マウスでは水頭症個体が見られなかったのに対し、13.5日齢胎児にX線照射した個体では、7匹中6匹が水頭症であった。以上の結果は、13.5日齢胎児と14.5日齢胎児では、神経幹/前駆細胞の放射線応答が著しく異なることを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究実施計画では、1)胎内被ばく(14.5日齢)と新生児(1週齢)被ばくに関する被ばく(2Gy)直後の神経幹/前駆細胞におけるDNA2本鎖切断と染色体転座の定量、及び2)胎内被ばく(14.5日齢)と新生児(1週齢)被ばくに関する被ばく(2Gy)6週間後の仔と母マウスの神経幹/前駆細胞におけるDNA2本鎖切断と染色体転座の定量、以上の2項目を実施する予定であった。この2項目に含まれる染色体転座の計測に関しては解析が遅れ気味である。その理由は、染色体標本の作成条件設定に予想以上に時間を要したためである。DNA2本鎖切断の計測に関してはほぼ計画通りに進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度の実験において、DNA2本鎖切断のマーカーとしてのγ-H2AXフォーカスの検出条件は確立したので、次は染色体転座の検出条件を確立する。その上で以下のように実験を進める。1)平成26年度に実施した胎児被ばく、新生児被ばくの直後、並びに6週間後の神経幹/前駆細胞におけるDNA2本鎖切断と染色体転座の計測について、データの信頼性を高めるために実験を複数回行う。2)胎児被ばくについて、被ばくのタイミングを12.5日齢、13.5日齢、14.5日齢、及び15.5日齢と変化させて、6週齢後の神経幹/前駆細胞におけるDNA2本鎖切断と染色体転座を計測する。これらの結果を、母マウスを用いた実験と比較し、神経幹/前駆細胞において胎児被ばく、及び新生児被ばくが成体マウス被ばくとどのように異なるのかを明らかにする。
|