研究課題/領域番号 |
26550038
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
高田 秀重 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70187970)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロプラスチック / 海洋汚染 / 海洋プラスチック汚染 / 海底堆積物 / 東京湾 / FTIR |
研究実績の概要 |
本年度はまず、堆積物試料からのマイクロプラスチックの分取・同定法を確立した。検討の結果確立したマイクロプラスチック分取法は以下の通りである。堆積物にNaCl飽和水溶液を加え、2分間撹拌、10分間超音波洗浄した。その後3時間静置し、およそ100 mlの上澄みを採取した。得られた上澄みを5 ㎜、1 ㎜のふるいと315 µmのプランクトンネットを用いて粒径別に分け、目視で個数を測定し、本科研費で購入したフーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)にてプラスチックの種類を同定した。1 ㎜~5 ㎜の粒子については、個数が非常に少なかったため、315 µm~1 ㎜の大きさのプラスチック粒子を研究対象とした。 次に、試料の保存状態について検討した。低温保存(4℃)、冷凍保存(-30℃)、凍結乾燥後冷凍保存したものについて、マイクロプラスチック個数を測定した。その結果、堆積物を冷凍することで、マイクロプラスチックの個数が増加することが分かった。マイクロプラスチックを分取するという目的においては、堆積物の保存方法は低温保存(4℃)が望ましいと考えられた。 実際の環境試料に確立した方法を適用した結果、人間活動の影響のない山岳湖沼堆積物においては、マイクロプラスチックが検出されなかったが、東京湾堆積物ではほとんどの地点からマイクロプラスチックが検出され、人為活動由来のマイクロプラスチックが海底に到達・蓄積していることが明らかになった。東京湾では、マイクロプラスチックは陸に近い地点ほど高濃度に集積していた。これは、海洋中のマイクロプラスチックが陸の近くで堆積しやすい性質を持つ可能性を示唆している。また、陸から沖合へマイクロプラスチックが輸送される過程でさらに断片化し、今回の測定方法では検出できなかった可能性や、断片化が進むことによって粒子が小さく、軽くなり、沈みにくくなった可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試料からマイクロプラスチックの分離法・同定法を開発した。実際の試料に適用し、山岳湖沼では検出されないことや東京湾沿岸では海底まで汚染が及んでいることが明らかになった。しかし、同時に、マイクロプラスチックが環境中でより細かくなっていることも示唆され、より小さなプラスチックの同定を行えるような方法の必要性も示唆され、現在手法の再開発に挑んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
より小さなプラスチックの同定を行えるような方法の開発を行い、それを研究室で保管中の世界各地で採取した実際の柱状堆積物試料に応用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料前処理補助の方の人件費の確定が確定が遅れ、作業日数が予想よりも少なくなった。 その分の前処理作業は研究者本人が行った。
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次年度使用額の使用計画 |
もともと27年度に使用を予定していた20万円と26年度からの繰り越しを合わせると225,844円となる。この予算は堆積物中からのプラスチックの比重分離に必要な試薬の購入費、研究成果の発表のための経費に充てる。
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