研究実績の概要 |
本研究では、はじめに、堆積物中のマイクロプラスチックを同定、定量する方法を開発した。本法の特徴は、マイクロプラスチックに付着した生物膜を過酸化水素で酸化分解除去することと、高感度なフーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)を用い、最少315マイクロンまでのマイクロプラスチックを測定可能なことである。Carbonyl IndexとVinyl Indexを併用し天然高分子有機物とプラスチックを区別した。相対誤差は3%以内であった。 開発した手法を日本(東京桜田壕)、タイ(タイランド湾バンコク沖)、マレーシア(ジョホール海峡)、ベトナム(トンキン湾)、南アフリカ(ダーバン湾)の柱状堆積物に適用した。各コア2層~3層の分析を行った。 堆積物からポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン,ペット、ポリ塩化ビニルなど多種のマイクロプラスチックが検出された。大きさは315マイクロン~1 mmのものが多かった。 桜田壕の下層(84-88cm)は1900年以前の堆積層でプラスチックの工業的生産以前と推定されるが、いずれのプラスチックも検出されなかった。中層(38-40cm)は1950年代の堆積層であり、ポリエチレンなどのプラスチックが検出され始め、2000年代の表層では中層の数倍の検出個数となり、集水域のプラスチック汚染の進行を示した。タイランド湾でも1960年に相当する下層(44-46cm)からプラスチックは検出されなかったが、中層(6-12cm)ではプラスチックが検出されはじめ、表層に向けてプラスチックの検出個数は増加した。 ジョホール海峡、トンキン湾、ダーバン湾の堆積物についても表層に向けて増加傾向を示し、アジア・アフリカ水域のマイクロプラスチック汚染は経年的に増加傾向にあることが示された。
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