研究課題/領域番号 |
26550044
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
高橋 隆行 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (70197151)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水中ロボット / 柱状採泥 / モジュール構造 |
研究実績の概要 |
本年度は,①スラスタモジュールの発生推力に関する再検討,②試作したロボットによる採泥実験,③その結果に基づく改良等を実施した。 まず①であるが,昨年度の結論として,採泥に必要な推力を得るためにスクリュー・プロペラ(以下プロペラ)を増設することで対応を行うこととしていた。しかしながら,さらに詳しく検討すると,モータとプロペラの特性を最適に適合させることで,モータの能力をさらに引き出せることがわかった。そのため,まずプロペラの計測装置を開発し,購入したプロペラの特性を精密に計測することで,カタログには掲載されていない推力係数とトルク係数を精密に求めた。これを用いて推力が最大となるような最適設計を実施し,最終的に減速比1:4.79の減速機ならびにコルトノズルを使用することにより,プロペラひとつで約55N(これまでの設計値の2倍以上)の推力を得ることに成功した。 続いて②であるが,試作したロボットを用いて,福島県飯館村内にあるはやま湖において,水深約5mの地点での採泥実験を行った。その結果,当初の設計通り不攪乱柱状採泥が行えることが確認できた。ただし,この実験の際に,ロボットを構成するモジュール間で無線通信が不安定になる現象が観察された。原因を調査したところ,各モジュールの間に金属フレームが通っており,それが電磁波環境に影響を与えている可能性があることが推察された。 そこで③として,各モジュールの独立性と気密性を保持するという基本コンセプト(各モジュールに穴を開けない)を守りつつ,無線通信を実現する手法として,各モジュールの表面に新たに設計したパッチアンテナを装着することとした。実際にアンテナを設計して実験したところ,水中でも空気中と同程度の電波強度で電波が伝搬することが確認できた。 以上,本研究は当初の目的である小型水中ロボットによる層構造保存型柱状採泥を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り,層構造を保存した柱状採泥を小型水中ロボットで実現し,実験により確認した。またこれに必要な小型スラスタモジュールを開発するとともに,水中で電波通信が不安定となる現象も解決した。
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今後の研究の推進方策 |
本ロボットを実際のフィールドでの計測に適用する場合,ロボットの可搬性についての課題が新たに生じた。一般に,フィールド調査を行う対象となる湖沼は自然のままの場合が多く,ロボットを岸辺まで運搬して水中投入を行い,計測後に回収するという作業は足場の悪い状況下で行わなければならない。また,そのような湖沼ではそもそも船を出すことが難しい場合も多く,ロボットを目的とする計測地点までどのように運ぶかという点も重要な考慮すべき点となる。そのためには水中ロボットをより小型のものとしつつ連続航続距離も伸ばす必要がある。これらのうち,まず採泥に必要な推力をさらに小さくするという課題の解決に向けた研究開発を継続して行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究はほぼ計画通りに進捗したが,本研究で開発する層構造保存型柱状採泥手法を用いた機器を装着する予定のロボットの設計変更により,採泥に必要な推力をさらに小さくする必要があることがわかってきた。現在,最大50Nとなっている採泥に必要な推力をさらに小さくする方策を検討するとともに,改良中の水中ロボットに装着して,本研究の最終目標である湖底の放射能濃度マップを作成する。
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次年度使用額の使用計画 |
新しい採泥器の試作用物品費,フィールド調査用旅費,学会出張費として使用する。
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