本研究では当初の目的である小型水中ロボットによる層構造保存型柱状採泥を実現した。しかしその一方で,本ロボットを実際のフィールドでの計測に適用する場合,ロボットの可搬性についての課題が新たに生じた。一般に,フィールド調査を行う対象となる湖沼は自然のままの場合が多く,ロボットを岸辺まで運搬して水中投入を行い,計測後に回収するという作業は足場の悪い状況下で行わなければならない。また,そのような湖沼ではそもそも船を出すことが難しい場合も多く,ロボットを目的とする計測地点までどのように運ぶかという点も重要な考慮すべき点となる。そのためには水中ロボットをより小型のものとしつつ連続航続距離も伸ばす必要がある。 そのため,水中グライダー方式を検討することとした。これは,ロボットに翼を装着し,浮力を調整することで浮沈を繰り返し,その際に翼を使って推進力を発生させて水平移動を実現するものである。この実現にあたっては,水中における翼の特性を把握する必要があり,そのための基礎実験を行うとともに,数値計算によりその特性を確認した。実験では,翼の下に10~20g程度の重りをとりつけ,翼長100mm,翼幅200mmの模型を使用して水中滑空試験を行った。滑空の様子はカメラで撮影して位置を確認した。また数値計算では,翼モデルの運動方程式を4次のルンゲクッタ法で数値積分して行った。しかしながら,実験と数値計算の結果には一致しない点もあり,さらに詳しく検討を行う必要があることがわかった。
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