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2014 年度 実施状況報告書

超高感度光干渉法による重金属汚染の植物成長動態への極短時間影響評価

研究課題

研究課題/領域番号 26550045
研究機関埼玉大学

研究代表者

門野 博史  埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (70204518)

研究分担者 ラジャゴパラン ウママヘスワリ  東洋大学, 食環境科学部, 助教 (40270706)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード重金属汚染 / カドミウム / 光干渉法 / レーザースペックル / ナノメートル成長揺らぎ / 環境評価
研究実績の概要

本研究では超高感度な光干渉法である統計干渉法を発展応用して,重金属影響下の植物の成長動態を秒スケールで明らかにすることにより,植物の重金属ストレスを短時間に評価する手法を開発することを目的としている。
H26年度は、植物成長の重金属影響下の極短時間形態応答の計測システムの改良として、プローブ光の照明システムの改良を試みた。これまでは、プローブ光として平行な2光速を照明することにより葉や茎なのどの2点間の伸縮を測定する光学系であった。面内変異や面外変異に対して感度を持たないという利点がある反面、長時間の植物の生長により茎などの対象位置から外れる欠点があった。そのため、プローブ光を一点で照明し面内変位を計測するシステムを試み両者の性能比較を行った。その結果従来と同程度の感度が得られることを明らかにした。
次に、植物の極短時間成長動態の重金属ストレスおよび長期的生育状態予測の指標としての有効性の検証に関する実験を行った。植物試料として、発芽直後のエンドウ豆およびニラを用いて、重金属であるカドミウムに対する暴露の影響計測を行った。予備実験として高濃度のCdCl2 水溶液(1g/L, 0.1g/L)を植物の根に暴露した。エンドウ豆の茎の伸びおよび先行研究により発見された植物生長の自発的ナノメートル揺らぎ(NIF)を観測した。その結果、1時間という極短時間の暴露に対しても明らかな成長速度の低下およびNIFの標準偏差の低下が認められた。
この結果に基づき、他の植物試料であるニラに対してもより低濃度(0.1mM, 0.01mM)のCdの影響モニタを行った。その結果、同様な傾向が見られ、NIFに基づく重金属評価法は数時間と言った極短時間で複数の植物に対してその影響のモニタが可能であることを実験的に確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

H26年度の研究計画では2つのサブテーマ、植物成長の重金属影響下の極短時間形態応答の計測システムの改良および植物の極短時間成長動態の重金属ストレスおよび長期的生育状態予測の指標としての有効性の検証を予定していた。
計測システムの改良については、プローブ光を一点で照明し面内変位を計測するシステムを試み両者の性能比較を行った。その結果従来の平行2光速プローブと同程度の感度が得られかつ安定した測定が可能となった。統計干渉法の利点は高精度化が容易であるという点である.すなわち統計解析に用いるデータ点数を増加することにより高精度化は容易に達成されるが反面計算時間が増大する.この問題を解決するために,6コアでクロック周波数の高いCPUを有する計算機を用いることにより十分な計算速度が実現された。
植物の極短時間成長動態の重金属ストレス影響のモニタに関しては、重金属としてカドミウムに焦点を絞り、また、対象試料植物として,エンドウ豆とニラの複数の植物に対して重金属の植物生長への影響計測を行った。その結果、1時間という極短時間の暴露に対しても明らかな成長速度の低下および植物成長の自発的ナノメートル揺らぎ(NIF)の標準偏差の低下が認められた。すなわち提案する手法により極短時間で重金属の植物への影響モニタが行えることを実証した。
重金属ストレスの生化学的な分析との相関に関して、光合成速度、クロロフィル蛍光反応の計測を並行して進めている。ただし、当初計画していた、植物細胞の活動電位計測に関しては、最近の論文より植物内の抗酸化酵素などの分析がより有効であると判断し次年度の計画に組み込むこととした。

今後の研究の推進方策

本手法の有効性を最終的に検証するため,環境条件(温度・照度)とそれに対する植物の応答に関して多くのデータを収集し従来法との相関解析を行い重金属ストレス評価法としての確立に重点を置く。
①ナノメータゆらぎの重金属ストレスの指標としての有効性の検証:前年度に引き続き温度・湿度の種々の条件下でCdを含む他の重金属の植物成長への影響計測をおこなう。前年度より本研究プロジェクトで観測されたデータに基づき,重金属ストレスとナノメータゆらぎ反応との相関関係を統計的に解析し,重金属ストレス指標としての有効性を検討する。
② 植物生理応答との比較検討:前年度に引き続き,既に確立されている植物の活性状態を評価する手法,すなわち,重金属暴露下の光合成速度やクロロフィル蛍光反応および抗酸化酵素などの生理状態の測定を平行しておこない相関分析をおこなうことにより,本新規手法の有効性を検討する。
③ナノメータゆらぎの生理学的起源の解明:成長のナノメータ揺らぎに関してその起源として,細胞への水の出入りが重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。これを検証するため細胞膜上に存在する水の出入りに関係するタンパク質を阻害する実験を行いこの現象の生理学的起源を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

提案する光学的手法と、生化学的な分析法である従来法との比較検討として、光合成速度,クロロフィル蛍光反応および植物細胞の活動電位計測を予定していた。しかしながら、最近の研究論文によると、重金属ストレスの生化学的な指標として、抗酸化酵素(SOD, POD, CAT etc.)の活性がよい指標となることが指摘された。一方、細胞の活動電位に関しては重金属ストレスとの明確な相関関係が確認されていないため、本研究では、生化学的な分析法として光合成速度,クロロフィル蛍光反応とともに抗酸化酵素の分析を次年度(H27年度)におこなうこととした。

次年度使用額の使用計画

上記の理由により、H27年度は植物試料中の重金属による抗酸化酵素(SOD, POD, CAT etc.)の活性状態の分析を新たにおこなうこととした。そのために、分析のための植物試料の前処理、および分析設備の充実に研究費を用いる。具体的には、植物試料の乾燥のための低温乾燥装置、冷却遠心機、分光分析器、試験試薬などが新たに必要となる。これらをすべて備品としてそろえる必要は無いが、埼玉大学の共通施設の設備および効率や利便性を考慮して、必要なものは備品あるいは消耗品として備える。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] Ultra short-term growth behaviour of plants under the influence of Cadmium using a highly sensitive interferometric technique, SIT2015

    • 著者名/発表者名
      K. T. K. M. De Silva, H. Kadono and K. Oh
    • 学会等名
      第62回応用物理学会春期学術講演会
    • 発表場所
      東海大学湘南キャンパス(神奈川県平塚市)
    • 年月日
      2015-03-14
  • [学会発表] Ultra-short term plant growth dynamics under cadmium stressusing Statistical Interferometry Technique2014

    • 著者名/発表者名
      S. Sekine and H. Kadono
    • 学会等名
      2014年 第75回応用物理学会秋季学術講演会 JSAP-OSA Joint Symposia
    • 発表場所
      北海道大学(北海道札幌市)
    • 年月日
      2014-09-18
  • [学会発表] Investigation of ultra-short term growth behavior of plants under the influence of heavy metal using a High Sensitive Interferometric Technique2014

    • 著者名/発表者名
      K. T. K. M. De Silva, H. Kadono and K. Oh
    • 学会等名
      日本生物環境工学会2014年大会
    • 発表場所
      明治大学駿河台キャンパス(東京都千代田区)
    • 年月日
      2014-09-09

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公開日: 2016-05-27  

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