研究実績の概要 |
本研究の目的は,申請者が提案している超高感度な光干渉法(統計干渉法)に基づいて,植物の環境に対する形態的応答を知ることにより,新しい植物の環境(重金属)ストレスモニタリング技術を確立することである.本技術はファイトレメディエーションに用いられる植物に対して早期に生育や重金属吸収能力等への影響の予測を行う手法として応用可能である. 植物サンプルとして,ニラの葉および発芽直後のカイワレダイコンの茎に対して計測をおこない,数秒単位での極短時間の成長速度にナノメータスケールの成長速度のゆらぎが存在することを確認した.これを植物成長の自発的ナノメータゆらぎ(NIF)と呼ぶこととした. 次に,この現象に基づいて短時間の重金属のNIFへの影響を調べた.重金属としてカドミウム(濃度0, 0.001, 0.01, 0.1mM)を根に暴露した.結果として,0.001mMの濃度に対してもわずか1時間後にNIFの標準偏差に12%の有意な低下が確認された.本測定と平行して酵素活性(SOD, POD, CAT)およびH2O2濃度の測定もおこなった.しかしながら,濃度0.001mMにおいて4時間の暴露に対してもSOD, PODに有意な変化は認められなかった.また,いずれの濃度に対してもCAT, H2O2に有意な変化は認められなかった. 次に,亜鉛(Zn)の暴露実験をおこなった.Znは重金属であるが低濃度であれば植物の微量必須元素であることが知られている.50ppmの濃度で暴露した際わずか1時間後からNIFの増加が見られ約13時間後で2倍になった. 以上のように本研究で提案した植物成長の自発的ナノメータゆらぎに基づく重金属ストレスの評価法は数時間という短い時間で植物の重金属ストレスを非破壊・非接触・実時間で高感度に評価可能であることが示された.
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