研究課題/領域番号 |
26550046
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 康行 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00235128)
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研究分担者 |
諏訪部 章 岩手医科大学, 医学部, 教授 (20241713)
岩沢 こころ 東京大学, 生産技術研究所, 研究員 (30402796) [辞退]
小笠原 理恵 岩手医科大学, 医学部, 助教 (70347871)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺胞 / 上皮細胞 / マクロファージ / 面密度 |
研究実績の概要 |
Ⅱ型肺胞上皮細胞はSprague Dawleyラットより摘出した肺をエラスターゼ処理・密度勾配遠心により,肺胞マクロファージは摘出肺の気管支肺胞洗浄液より,それぞれ安定して採取することに成功した.培養系にて,Ⅱ型肺胞上皮細胞は次第にⅠ型細胞へ分化する.カルチャーインサート上で培養液やコートタンパクを様々に変えて検討したが,当初は播種密度の制御により薄く扁平なⅠ型肺胞上皮細胞層を再現性良く形成させることができなかった.そこで,8,10,15,40週齢のラットから採取した細胞を様々な密度で播種し,24時間後の接着密度を測定し,さらに7日間培養後の細胞形状を観察した.一連の検討の結果,週齢に依らず,24時間後の正味の付着細胞数を3.0-4.0×104 cells/cm2の範囲に持ち込むことで,ほぼI型の面積が大きく極めて薄いI型様の上皮細胞組織をカルチャーインサート上に安定して形成させることに成功した.このように形成した細胞層の経上皮電気抵抗値は,ヒトII型株細胞のA549の約100 ohm・cm2に比べて極めて高い約500 ohm・cm2という値を示し,少なくとも10日間は安定であった.採取した肺胞マクロファージを播種すると,強固に付着することが観察された.実肺胞において,肺胞マクロファージは約3.0-6.0×103 cells/cm2で存在していると報告されているが,本系では平均4.8×103 cells/cm2とin vivoと同程度の共培養系を構築することができた.この共培養は10日程度は十分に維持された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の計画通り,II型細胞および肺胞マクロファージの安定採取を達成した.播種密度の調整によるII型細胞のI型への分化制御は,培養液やカルチャーインサート被覆タンパク質を様々に変えても,当初はなかなか再現性が得られなかったが,細胞の24時間後の付着確率が極めて低かったことから,この正味の付着細胞面密度を一定範囲に持ち込むことで,I型細胞への安定分化を達成できるのではないかと考え,週齢や播種密度を様々に変えて,24時間後の正味の付着細胞面密度と最終的なI型様の上皮層形成の関係を調べ,安定形成条件をほぼ確立できたことは特記に値する.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,より生理学的な肺胞モデルをめざし,選定した播種密度条件の下で,再度,培養液や基質の改善を行う.また,直径300 micro-m程度の肺胞と同じ凹構造を持つ表面を微細造形,II型細胞が角を好むのではないかとの仮説の下,その中でのI型分化挙動を検討,肺胞と同じくI型が表面積の95%を多いながらも残りの5%をII型が占めるといった構造の実現を目指す.また,I型上皮単培養系とマクロファージ共培養系にて,蛍光ナノ粒子などを用いた粒子負荷実験を行い,その結果を簡単なコンパートメントモデルにてまずは記述することを目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
主任研究者との打ち合わせの交通費を計上していたが、さらに最適な培養条件を決定するための実験を行う必要性が生じたため、打合せは次年度以降に行うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
主任研究者との打ち合わせ旅費に加えて,実験用の動物(ラット)、試薬(エラスターゼなど)、画像解析ソフトなどの購入費用も予定している。
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