研究課題/領域番号 |
26550048
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
国末 達也 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (90380287)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 甲状腺ホルモン / ステロイドホルモン / 機器分析 / タンパク結合型 / 遊離型 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、既存の免疫測定法で生じ得る抗体への非特異的反応による測定誤差の影響を受けない、ヒトだけでなく様々な動物種に適応可能な内因性ホルモンの高精度機器分析手法を確立することである。平成25年度は、脳神経系の発達に重要な役割を果たすことから生理学的要因による恒常性撹乱の研究事例が多い甲状腺ホルモン(THs)を対象に、分析法の開発を試みた。まず既報に従い、輸送タンパク結合型と遊離型を合わせたトータルのTHsについて、精製には有機溶媒タンパク分解とSolid Phase Extraction (SPE)法を、定量には高速液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いて精度の確認をおこなった。検討にはウシ血清を用い、プロホルモンとして作用するL-thyroxine (T4)および核内受容体(thyroid hormone receptor: TR)に対し活性化を有する3,3’,5-triiodo-L-thyronine (T3)だけでなく、T4もしくはT3の脱ヨード化体である3,3’,5’-triiodo-L-thyronine (rT3)、3,5-diiodo-L-thyronine (3,5-T2)、3,3’-diiodo-L-thyronine (3,3’-T2)も対象物質とした。エレクトロスプレーイオン化法のポジティブモードで高感度が得られたため、[M+H]+ → [M+H-HCOOH]+をMRMトランジションとして選定した。試料への添加回収試験を実施した結果、96.4 - 109% (CV% 1.2 - 8.6)と良好な値が得られ、高精度の測定法が確立された。 THs恒常性機能の評価には、生理学的活性を有する遊離型THs(タンパク非結合型)の血中濃度を測定することが、より重要度が高い。遊離型THsの場合、タンパク結合型との分離が不可欠となるが、血中輸送タンパクであるthyroxine-binding globulin (TBG)、transthyretin (TTR)、そしてalbuminは54-66kDaの範囲内にあるため、30kDa以下の分離フィルターを有する3種のultrafiltrationデバイスを用いて、pHや温度設定、そして遠心力・時間など綿密な精度チェックを現在実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、L-thyroxine (T4)、3,3’,5-triiodo-L-thyronine (T3)、3,3’,5’-triiodo-L-thyronine (rT3)、3,5-diiodo-L-thyronine (3,5-T2)、3,3’-diiodo-L-thyronine (3,3’-T2)の標準品を購入し、これら甲状腺ホルモン(THs)によるLC-MS/MSの設定条件を確立した。THsは脱プロトン化しやすい水酸基およびカルボキシル基、そしてプロトン化しやすいアミノ基を官能基として有しているため、イオン化についてはESI (electrospray ionization)のネガティブおよびポジティブの両モードを検討することに加え、いくつかのLC-MS/MSカラムおよび移動相の組み合わせをチェックする必要があったが、高感度のmultiple reaction monitoring (MRM)を用いた定量法が構築できた。そして、血中輸送タンパク結合型と遊離型を合わせたトータルのTHsについて、有機溶媒タンパク分解とSolid Phase Extraction (SPE)法よりウシ血清を用いてLC-MS/MS測定法の精度確認したところ、良好な値が得られ、トータルTHsの高精度機器分析法が確立された。現在、THs恒常性機能の評価にきわめて重要な生理学的活性を有する遊離型THs(タンパク非結合型)の測定法を、3種の限外ろ過デバイス(1)先行研究でヒト血清中遊離型THs分析に使用されたCentrifree YM-30、(2)YM-30と同様の膜素材(再生セルロース)を有するAmicon Ultra-0.5、(3)安価で血清中遊離型医薬品分析で実績のあるNanosep Omegaを用いて検討しており、全体としては順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
甲状腺ホルモン(THs)の恒常性機能を評価する上で、きわめて重要な生理学的活性を有する遊離型THs(タンパク非結合型)の測定法を確立する。遊離型THsの場合、タンパク結合型との分離が不可欠となるが、血中輸送タンパクであるthyroxine-binding globulin (TBG)、transthyretin (TTR)、そしてalbuminは54-66kDaの範囲内にあるため、30kDa以下の分離フィルターを有する3種の限外ろ過(ultrafiltration)デバイス、(1)先行研究でヒト血清中遊離型THs分析に使用されたCentrifree YM-30、(2)YM-30と同様の膜素材(再生セルロース)を有するAmicon Ultra-0.5、(3)安価で血清中遊離型医薬品分析で実績のあるNanosep Omegaを用いて検討する。遊離型THsの高精度測定には、上記の血中輸送タンパクに結合しているTHsの解離を防ぐことが必須条件であるため、pHや温度設定、そして遠心力・時間など綿密な精度チェックを実施する。また、遊離型THsの測定には、限外ろ過法だけでなく平衡透析法も有用性が高い可能性があるため、平衡透析デバイスも検討予定である。確立された遊離型THsの高精度機器分析法を用いて、数種の動物における血清中THs濃度を測定し、その精度から適用性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、研究代表者が新たな所属機関へ異動したことに伴い、化学分析に関わる物品費を当初想定していた額より抑えることができ、助成金の一部を次年度以降使用分として繰り越した。今後は、血清試料の前処理工程に必要な限外ろ過や平衡透析などの消耗品に加え、化学分析に関わる有機溶媒・試薬などが必要となる。また、先端分析機器の安定稼働のため消耗品部品の交換だけでなく分析部の定期的な調整費も必須となる。
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次年度使用額の使用計画 |
内因性ホルモン分析に必要な限外ろ過・平衡透析デバイス、ガラス器具、有機溶媒、試薬、測定機器のAB SCIEX QTRAP 5500 LC-MS/MS systemの安定稼働に不可欠な消耗品部品や分析部の定期的な調整費に本研究費を活用する。また、研究成果を国内外の学会やシンポジウムで発表するための旅費や国際学術誌に論文として投稿する際の印刷費等にも使用する計画である。
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