研究課題
最終年度は、一般に臨床で使用されている平衡透析法(Equilibrium dialysis: ED)による遊離型甲状腺ホルモン(THs)測定の検証をおこなった。EDデバイスはRapid Equilibrium Dialysis Device (Thermo Fisher Scientific Inc.)を用い、透析開始後0、2、4、8、12、16、24、30時間におけるヒトおよびウシの血清中遊離型THs濃度をLC-MS/MS測定した。その結果、平衡状態の到達に16時間を要することが判明し、24時間後における遊離型THsレベルの測定誤差は±10%と良好な精度が得られた。ED法と前年度最適化した限外ろ過(Ultrafiltration: UF)法を比較したところ、ヒト血清中遊離型T4濃度(mean ± SD)はED法(透析24時間)で17 ± 0.99 pg/mL、UF法で17 ± 1.5 pg/mL、ヒト血清中遊離型T3濃度はED法(透析24時間)で4.1 ± 0.37 pg/mL、UF法で3.8 ± 0.40 pg/mLであり、両法の測定値は近似していた。同様の結果はウシ血清中遊離型T4およびT3濃度でも観察された。血清試料から遊離型のTHsを分離するために必要な時間は、ED法の16~24時間に比べUF法は0.5~1時間と明らかに短く、作業効率でもUF法は遊離型THs測定に適していることが示された。本研究で確立した遊離型THsの高精度機器分析法を用いて、他の内因性ホルモン(エスロトジェン類、アンドロジェン類、糖質コルチコイド類)における遊離型の濃度測定を試みた。LC-MS/MSの分析条件を最適化しUF処理液を測定した結果、コルチゾールのピークが確認され、遊離型の存在が示唆された。
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