研究実績の概要 |
メタン生成菌によるCO2のメタンへの転化は、CO2がメタノフラン(MFR)へN-ホルミル化により固定され、これがホルミル転移した後に還元メチル化して、チオール基によるメチル転移の後に水素化しメタンが気相へ放出する。これら一連のプロセスの中で、CO2がMFRへN-ホルミル化により固定される反応は吸熱反応であり、他の発熱的なプロセスに比べ外部からのエネルギーの投入が必要である。本研究では、メタン生成細菌によるCO2のN-ホルミル化による固定反応に焦点を絞り、それを模倣した触媒反応系と腐植物質(HS)モデルの添加がN-ホルミル化合物の生成に及ぼす影響を検討した。 MFRのモデルとしてベンジルアミン(BA)を用い、水素源として水素化ホウ素ナトリウムおよびポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)、トリフェニルホスフィン、1,2-ビスジフェニルホスフィノエタン及び1,2-ビスジフェニルフォスフィノベンゼン(dpb)のRu, Pd, Cu錯体にて、ベンジルホルムアミド(BFA)の生成に関する検討を行った。その結果、Cu-dpb錯体とPMHSの組み合わせでBFAの生成が見られ、モデル触媒反応系に成りうることがわかった。この触媒反応系へのHSモデルの添加効果を調べた結果、リグニン由来のフェノール酸がBFAの生成を大きく促進することを見出した。BFAの生成において、ギ酸の生成も同時に見られた。ゆえに、ギ酸を介してのBAからBFAの転化に関する検討も行った。HSモデル非共存下ではギ酸とBAからBFAは生成しなかったが、HSモデルを共存させることによりBFAの生成が促進することを見出した。ゆえに、BAがCO2をN-ホルミル化で固定する反応では、CO2の還元生成物であるギ酸が重要な役割を果たしていると考えた。
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