研究実績の概要 |
今年度は、まず、ポルフィリンとしてα, β, γ, δ-tetrakis (4-sulfonatophenyl)-porphine(TPPS)を用い、錯形成を補助する物質として4-propyl-pyridine、イオン会合体の有機陽イオンとしてHexyltriphenylphosphonium (HTPP+)、有機陰イオンとしてPerfluorooctanoate (PFOA-)を用い、水相のCsがイオン会合体相へ濃縮可能かどうかの検討を行った。結果、Csに対する錯形成は確認されず、ポルフィリンの中心部の空間サイズは約4Åに対しCsのイオンサイズが約3.62Åと近い上、Csはアルカリ金属で水和エネルギーが大きいことが原因として示唆された。そこで、Csに対する錯形成物質として新たに、クラウン系のDibenzo-24-crown-8(DB24C8)(カウンターアニオンとして2,4-Dinitro-naphthol(NOL-))および4’-Carboxybenzo-18-crown-6(CB18C6-)、分子量400のポリエチレングリコール(PEG-400)、ホウ素系のテトラフェニルボレート(TPB-)を検討した。クラウン系およびPEG系を溶解するための混和溶媒としてDMSOを用いた。その結果、TPB-において最も良好な結果が得られ、Cs+ : TPB- = 1 : 2.5の条件において抽出率50.0%、分配比(水相のCs濃度に対するイオン会合体相のCs濃度)は1000となった。これは、TPB-が水に可溶であり、Cs-TPB錯体の生成及び水相からイオン会合体相への移相が効果的に行われたためと考えられる。一方、PEG-400は複数の酸素の非共有電子対により包接がされにくい上水和力が大きいこと、クラウン系の場合、DMSO添加による水相への溶解性が高まったため抽出率や分配比が減少した。
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