研究実績の概要 |
今年度は、前年度にて最も高い濃縮効果を示したテトラフェニルボレート(TPB―)を用いた際の、イオン会合体によるCs濃縮の最適条件の検討を行った。検討項目として、イオン会合体の種類、競合イオンの影響を検討した。イオン会合体は、有機陽イオンとしてHexyltriphenylphosphonium(HTTP+)と有機陰イオンとしてPerfluorooctanoate(PFOA―)を用いた系、n-Pentylamine(PA+)とPFOA-を用いた系、Tetradecyltriphenyl phosphonium(TDTPP+)とPerfluorobenzoic acid(PFBA―)を用いた系の検討を行った。結果、PA+とPFOA―の系において最も良好な結果が得られ、Cs+:TPB― = 1:5の条件において抽出率97.3 %、分配比(水相のCs濃度に対するイオン会合体のCs濃度)は8570と高い値を示した。これはHTPP+やTDTPP+と比較した場合、PA+がTPB―と疑似の構造を有さないためと考えられる。TPB―と似た構造を持つHTTP+やTDTPP+は、TPB-と結合することでCs+の錯形成反応を阻害したため、抽出率や分配比がPA+の場合に比べ減少した。この結果より、PA+とPFOA―の系において競合イオンとしてNaとKの影響を検討した。Na+/Cs+=1000,10000の条件とK+/Cs+ =1000,10000の条件で検討を行った。結果、Naでは抽出率が増加、Kでは抽出率が減少した。これはTPB―がCs = K >Naという選択性の強さを持つため、KはNaと異なりTPB―とCsとの錯形成を阻害したと考えられる。 以上より、錯形成物質によるイオン会合体を用いたCs濃縮の可能性が示唆された。さらに、その効果についてNa+存在下においても濃縮可能という知見を得ることができた。
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