研究課題/領域番号 |
26550056
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
李 玉友 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30201106)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境技術 / 環境負荷低減 / 土木環境システム / 省エネルギー / 嫌気性処理 / メタン生成 / 環境微生物 |
研究実績の概要 |
本研究は、省エネルギー・創エネルギー的嫌気性処理技術を硫酸塩含有化学工場廃水に応用するために、メタン生成、硫酸塩還元および生物脱硫の3つの生物反応を融合することで、新しい嫌気性処理融合プロセスを開発しようとするものである。 H26年度はエタノール・酢酸・硫酸塩を含む人工廃水を用いてHRTを48 hから2 hまで変化させた連続実験を行い,UASB処理に及ぼすCOD容積負荷の影響を評価した。COD容積負荷が12.3 g-COD/L/dの条件で,86.5%以上の高いCOD除去率が得られた。HRT3-12 hの条件において流入CODの47.5-54.4%がバイオガスメタンに変換され,21.4-28.0%が硫化物に変換された。UASBリアクターに保持されたグラニュールの平均粒径は1.8 mmであり,その平均沈降速度は96.5 m/hであった。また,グラニュールのメタン生成活性(SMA)と硫酸塩還元活性(SSA)の測定結果に基づき高濃度硫酸塩条件下でのエタノールの分解経路を考察した。 嫌気性処理のエタノール・酢酸・硫酸塩を含む有機合成化学工場廃水への適用性を評価するために,COD/SO42- 比率の影響を検討した。連続実験の結果から,COD/SO42- 比率が20,COD容積負荷が25.2g-COD/L/dの条件で,87.8%の高いCOD除去率が得られた。高濃度硫酸塩(6000mg/L)およびCOD/SO42- 比率が0.5の場合,79.2%のCOD除去率と3.3L/L/dのガス生成速度が維持された。COD/SO42- の比率が20から0.5まで低下するのに伴い,流入CODのメタンガスへの転換率は80.5%から54.4%まで低下したが,すべての条件において,メタン生成が主な反応であった。COD/SO42- の比率はSRBとMPAの競合に大きな影響がないと見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画では、UASB法による硫酸塩含有廃水の処理について、HRT, 容積負荷およびCOD/SO42- 比率の影響について実験的検討を行い、水質、CODと硫黄の物質収支を把握したとともに、メタン生成と硫酸塩還元の競争を解析した。当初計画した目標はおよそ達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はおおむね計画通りの成果が得られたので、平成27年度以降は、前年度に実施される人工排水連続処理実験によって得られた基礎的知見を参考に,実化学工場廃水を対象としたラボスケール長期連続処理実験を行う。実化学工場廃水の化学有機物濃度や硫酸塩含有量といった特性を把握し,新規装置におけるそれぞれの挙動を測定・分析する。また化学工場廃水中の特定物質は嫌気性処理、生物脱硫への影響を評価する。 (1)微生物群集の棲み分けデザインと制御:前年度に実施される主要微生物群集構造の解析により,本研究の条件に最も適した微生物群の選定を行う。各微生物群はメタン生成活性や硫黄酸化率,汚泥転換率などをパラメータ化し,その優位性を総合的に判断する。処理水質等をモニタリングし,連続実験系における各パラメータを確認する。また、運転管理における指標となるようなデータの獲得を目指す (2)開発した新装置の性能評価及び最適化: メタン発酵や硫酸塩還元への影響を検討するために、ガス返送と脱硫槽設置二つの新規システムを構築する。本研究で用いる実験装置は前年度の連続実験結果を元に,空気吹き込み量やガス循環比などについて改良を加える。運転パラメータについては,まず流入する排水における硫酸塩が処理性能に与える影響について検討を行う。硫酸塩還元細菌は化学工場廃水の嫌気性処理に与える影響を明らかにする。またより安定した運転を達成するために反応槽内の水理学的滞留時間(HRT),汚泥濃度,pH,温度などの影響について検討を行う。さらに形成した生物脱硫膜の元素及び微生物について検討する。
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