研究課題/領域番号 |
26550057
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
橋本 義輝 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00323254)
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研究分担者 |
熊野 匠人 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70585025)
小林 達彦 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70221976)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 微生物 / 酵素 |
研究実績の概要 |
アジ化物は、極めて猛毒性の高い物質である。アジ化物は多方面で利用されている化合物ではあるが、その多くが毒性や爆発性を有する上に処理技術が不十分であるため、利用が敬遠される傾向にある。アジ化物が如何にして生合成・生分解されるかについての報告(微生物を含)は無く、その代謝(およびそれに関わる酵素および遺伝子)は未解明である。アジ化物分解経路が発見されれば、アジ化物の安全かつ簡便な分解処理に利用できる可能性とともに、アジ化物から有用な物質生産に広く利用できる可能性が期待できる。 本研究では、アジ化物分解酵素を分子レベルで解析し、得られる情報を基に、これらの物質を効率よく無害化する新たな微生物の育種を目的とする。 精製酵素は失活しやすく非常に不安定であり、精製酵素の収率が著しく低いため、何度も最適培養条件で大量培養を行い、大量に調製した菌体からアジ化物分解酵素の精製を行った。精製標品を用いて、分子量、至適温度、温度安定性など本酵素の諸性質を一部、解明した。 精製したアジ化物分解酵素が極く微量であるため、本酵素のN末端部分アミノ酸配列および内部部分アミノ酸配列の決定は困難と判断した。アジ化物分解酵素の構造遺伝子を単離するために、アジ化物分解菌の染色体DNAを制限酵素を部分分解後、生じたDNA断片を精製してプラスミドと連結した。この溶液を用いて大腸菌を宿主として形質転換することで、本菌の染色体DNAライブラリーを構築した。本ライブラリーを用いてアジ化物分解酵素構造遺伝子の単離を行っているが、現在までに取得に成功していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大量培養と大量精製を繰り返すことで、本酵素の諸性質を調べるのに必要な酵素量を獲得した。精製標品を用いて、昨年度までに決定できなかった諸性質について解明することに成功した。本酵素の構造遺伝子全長のクローン化には成功していないが、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
アジ化物分解酵素の大量培養および精製を行い、すべての諸性質の解析を行った。 今年度構築したアジ化物分解菌の染色体DNAライブラリーを用いたアジ化物分解酵素構造遺伝子の単離を引き続き行うが、並行して、精製した酵素を用いてN末端部分アミノ酸配列および内部部分アミノ酸配列を決定し、その情報を基にオリゴヌクレオチドプライマーを作成し、アジ化物分解菌の染色体DNAを鋳型として、サザンハイブリダイゼーション法により構造遺伝子全長をクローニングする予定である。後者の実験を遂行するためには、今後も引き続き大量培養および精製を行い、N末端部分アミノ酸配列および内部部分アミノ酸配列の決定に必要な量を確保する。
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次年度使用額が生じた理由 |
アジ化物分解酵素の不安定さのため、本酵素の大量培養および精製を余儀なくされ、本酵素の諸性質の解明に必要な量は獲得できたが、N末端部分アミノ酸配列および内部アミノ酸配列の決定に必要な量は獲得できなかった。そのため、本菌の染色体DNAライブラリー構築し、それを用いた探索を行ったが、アジ化物分解酵素構造遺伝子の単離には至っておらず未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の計画に必要な、分析用試薬、遺伝子操作試薬、HPLCカラム類、ガラス類、プラスチック類などの消耗品の購入として使用する計画である。
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