本年度は重金属捕集材としてスチレンービニルピリジン系共重合体を作成し,その機能評価を行った.前年度検討した反応条件を参考に,ビニルピリジン系モノマー5%を含む共重合体の作成を行ったところ,ビニルピリジン系モノマー3%のときよりも粒径が大きいものが含まれる割合は増えるものの,収率は94%と大きく改善されることが分かった.今回は,これを用いて機能評価を行った.まず,この共重合体は十分にコンディショニングすれば,試料溶液を流す際にチャネリングを起こさないことを確認した.共重合体100mgに5%のトリブチルスズ(TBT)を含む溶液を流し,その吸着量を測定したところ,最大2.9%のTBTが保持されることが分かった.一方,同様の粒径を持つ参照捕集材(スチレンホモポリマー)で実験したところ,その保持量は2.8%であった.このように二つの捕集材の間で最大保持量の差はほとんどなかった.これは表面積が同じであれば,ホモポリマーであっても最大吸着量は変わらないことを示している.ただ,TBTを吸着したホモポリマーでは,TBTはヘキサン洗浄すると100%回収されるが,共重合体ではそうではないことから,TBTは共重合体と強く吸着していることがわかる.従って,高濃度廃水の場合は,ホモポリマーでも十分捕集でき,特に捕集されたTBTを回収し,捕集材を再利用することを考えると,ホモポリマーの方が容易であるというメリットがある.一方,共重合体はその吸着能の高さから低濃度廃水の処理に向いているといえる.
|