研究課題/領域番号 |
26550063
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
塩盛 弘一郎 宮崎大学, 工学部, 准教授 (80235506)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 凍結ゲル / 吸着剤 / 砒素 / セシウム / ナノ粒子 / 多孔質ゲル / 有害金属除去 |
研究実績の概要 |
アクリルアミド、架橋剤、重合開始剤の水溶液を円筒形の容器に入れ、-12~-20 ℃の凍結バスにて凍結し、約12時間ラジカル重合反応を行いポリアクリルアミド凍結ゲルを調製した。モノマー、架橋剤および開始剤などの濃度と凍結温度の調製条件がゲル構造におよぼす影響を明らかにした。得られた凍結ゲルをを塩化鉄(III)水溶液に浸漬し、ゲル壁内に鉄イオンを含浸浸透させた。その後取り出し、水洗後、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムもしくはアンモニア水溶液に浸漬し、ゲル壁内で酸化水酸化鉄のナノ粒子を析出させた(含浸担持調製法)。一方、予め塩化鉄(III)水溶液とアルカリ水溶液を混合して酸化水酸化鉄微粒子を生成させ、そこにアクリルアミド、架橋剤、重合開始剤の水溶液を加えて凍結ゲルとする調製も行った(沈殿物含有調製法)。 塩化鉄濃度、アルカリ溶液の種類と濃度、析出過程の温度と時間、凍結ゲルの調製条件を変化させて、生成した酸化水酸化鉄の粒子形状をSEMで観察し、結晶構造と粒子径をXRDで測定し、粒径と分散状態を評価した。調製条件とナノ粒子形状との関係を明らかにした。さらに、ヒ素(V)の吸着実験を行い、調製条件と吸着特性を明らかにした。 鉄酸化物沈殿そのものよりも、クライオゲルの方が100mg/g以上と非常に高いヒ素吸着量を示した。このことからゲル中で調製した鉄酸化物の微粒子はAs(V)の吸着能が高いことがわかった。また、沈殿物含有調製法クライオゲルの方が、含浸担持調製法クライオゲルよりも吸着量が高かったことから、より簡便な方法で、高い吸着力のあるヒ素吸着剤を調製できることが分かった。酸化鉄含有クライオゲルのXRD解析より、目立ったピークが観察されず、生成した鉄酸化物はアモルファス状態であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリアクリルアミドの凍結ゲル内に酸化鉄ナノ粒子を内包させた砒素の吸着フィルターを含浸担持調製法および沈殿物含有調製法で調製し、ゲル構造、ナノ粒子構造および砒素の吸着特性を明らかにすることが出来た。酸化鉄ナノ粒子が結晶性が低くアモルファス状態であるほうが砒素の吸着量が高くなり、また、これまで報告されている酸化鉄系吸着剤の砒素の吸着量にくらべ高い吸着量(100mg/g-dry gel)であることを示す事が出来た。これらの結果について論文としてまとめRecouces Processingに掲載された。 一方、アクリルアミドゲルの調製にプルシアンブルーナノ粒子を添加する事により、プルシアンブルーナノ粒子内包凍結ゲルを調製することが出来、多孔質構造であることを確認出来た。 以上の事からおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1.ナノ粒子を担持した凍結ゲルを用いた環境浄化フィルターの調製と浄化特性評 ナノ粒子含有凍結ゲルの実際の分離プロセスでの利用形態で使用した場合の影響を検討する。ナノ粒子含有凍結ゲルをカラム内で調製しカラムフィルターで利用する場合、小さなナノ粒子含有凍結ゲルを大量に充填・積層したフィルターを形成する場合、ナノ粒子含有凍結ゲルを流動層状態で利用する場合、および回分操作について、砒素およびセシウムを含有した水の浄化処理を行い、処理量と除去特性の関係を明らかにし、利用方法を確立する。吸着剤の再生と繰り返し利用による除去特性、繰り返し利用の際の凍結ゲルフィルターの耐久性、廃棄の際の減容化について実証試験を行う。これらの成果を総合し、ナノ粒子含有凍結ゲルを利用した環境浄化フィルターの設計手法を確立し、実際の浄化プロセスの構築・提案を行う。
2.金およびその他のナノ粒子を担持した凍結ゲルの開発と応用(大学生1名) 調製した凍結ゲルへ、塩化白金酸水溶液を含浸浸透させ、その後、アルカリ水溶液やアスコルビン酸、ヒドラジンおよび尿素などの還元剤水溶液を含浸浸透させることによりゲル壁内で金ナノ粒子を形成させる。調製条件を変化させて、生成した金ナノ粒子の形状をSEMおよびTEMで観察し、粒径と分散状態を評価する。さらに、紫外可視吸収スペクトルによる金ナノ粒子の光学特性の評価を行う。調製条件とナノ粒子形状との関係を明らかにする。得られた金ナノ粒子内包凍結ゲルを用いて、硝酸態窒素の接触分解を行い触媒活性の評価を行う。凍結ゲル中に固定化された金ナノ粒子の表面修飾を検討する。チオール基の導入と抗体および官能基の固定化を行い、分子認識金ナノ粒子をin situで調製する。分子およびタンパク質との相互作用を吸着量測定、ラマンスペクトル、可視吸収スペクトルにより評価し、ゲルの色調変化から物質の高感度検出を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の中で、当初SEM観察に使用するオスミウムコーターを計画していたが、交付額の関係でオスミウムコーターに代わる機器の購入を検討していたが、適当な価格の機器が無かったために、物品費を使用しなかった。また、人件費・謝金については、研究を担当している修士学生のティーチングアシスタントや留学生チューターの採用で、研究補助による謝金支出が出来なかった。外部の研究補助の雇用を検討したが、適当な人材が見つからなかったために、使用できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費については、本研究に必要かつ適切な機器・器具および試薬等を選定し、計画的に支出する。 人件費・謝金については、研究補助の担当者として適当な人材が確保出来たため、雇用し研究補助を行い予定額の支出を行う。
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