研究課題/領域番号 |
26550067
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
森 也寸志 岡山大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80252899)
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研究分担者 |
登尾 浩助 明治大学, 農学部, 教授 (60311544)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射性物質 / 環境保全 / 放射性セシウム / 浸透現象 / 除染技術 |
研究実績の概要 |
本研究では,低濃度汚染土壌を用いて,根群域の汚染回避技術を試みた.放射性物質量の低減対象にはブルーベリー畑を想定し,人工マクロポアを使って,交換態の放射性物質を根群域下に移動させ,鉱物に固定させることを考えた.通常のマクロポアでは下方浸透促進中に周囲の土壌に汚染物質を拡散させる可能性があるため,人工マクロポアを被覆し,根群域層で汚染物質が拡散しない工夫をした.ポット栽培を行いピート層の直上に汚染物質層5cmをつくり,マクロポアの有無の違いを作り,下方浸透に対する効果を検討した.肥料には,セシウムと交換する効果のある硫酸アンモニウム,植物によるセシウムの吸収抑制に効果のあるカリウムを施用した.また,最下層にはセシウムの吸着固定のために黒ぼく土を施用した. 栽培後にカラムを分解すると,マクロポアがないものよりマクロポアがある方が,下層部での放射能検出が大きくなる傾向があった.また,アンモニウムを施すと特にマクロポア周辺部で著しい下方移動傾向が観察された.カリウム施用区でも,アンモニウムほどではないが,下方移動効果は見られた.両者とも根群域への拡散はないため,側方拡散を防ぎつつ,バイパス移動させていると考えた.一方で,ブルーベリーの葉からはアンモニウム施用区で放射能が検出され,カリウム施用区では検出されなかった.アンモニウムは土壌中における放射性物質の交換・移動の効果が大きいと思われるが植物に吸収されるリスクもあるとわかった.一方カリウムは植物への吸収抑制が働くことがわかった.なお,アンモニウムは最表層濃度が低下傾向にあり,植生を考えずに移動・固定させることだけが目的であれば有力な選択肢になりうると考えた.表面被覆型の人工マクロポアを使い,肥料を施用すると放射性物質の下方移動と根群域の汚染回避に一定の効果があった.果実の収穫を待ってさらに効果を検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した実験を行い,放射性セシウムが異動しやすい条件,植物が吸収しやすい条件を明らかにしたため.また,根群域での拡散を防いでいるため,人工マクロポアの放射性物質のバイパス効果が明らかであり,当初目的を達成していると判断できるから.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従い,上記技術の成果を圃場レベルの実験に適用する.特に施肥の効果についてはアンモニウムとカリウムを適切に使うことで移動と吸着防止を同時に行える可能性が出てきたため,この効果について明らかにする予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
圃場における効果を検討する実験が秋以降継続しており,効果的な解析と考察には年度を越え,植物体が成長してから調査・分析を実施する方が良いため,繰り越しを行った.研究は当初予定通り進んでおり,全体に支障はない.
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次年度使用額の使用計画 |
主に現地における土壌の分析を実施するために必要な経費および成果の発表に必要な経費を計上している.硫酸アンモニウムとカリウム施肥の違いによる移動と植物への影響について効果的な成果が得られる可能性があり,計画通り調査・実験を遂行していく.
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