国内で年間20万トン以上排出されるアルミニウムドロス残灰は、現在そのほとんどが鉄鋼メーカーにて昇熱や脱酸目的で利用されているが、近年の世界的な鉄鋼需要低下の影響から、ドロス残灰の利用を中止する企業が現れ始めた。鉄鋼メーカーに依存しないドロス残灰の有効利用法確立は急務の課題であり、省エネルギー・コンパクトなプロセスで埋め立て処理を必要としないシステムが望まれる。 本研究では、特にドロス残灰に含まれるアルミニウム窒化物に着目し、窒化物と水との反応を利用したアンモニアと水酸化物の合成法を提案した。またそこでは、提案プロセス実現のため、残灰のソーティングによるアップグレーディング効果、窒素雰囲気加熱による塩化物揮発挙動、合成窒化物を原料とした亜臨界水中でのアンモニアと水酸化物の生成挙動について調査した。 ドロス残灰は約200μmのふるいを用いてソーティングすることにより、効果的に残灰からメタル分と、塩化物および窒化物を分離できることを明らかにした。また塩化物および窒化物が濃化する微粒子のドロス残灰については、窒素雰囲気における800℃以上での加熱処理により、塩化物を揮発除去し、10%程度含まれるメタル分を同時に窒化できることを明らかにした。塩化物を揮発除去し、窒化物リッチとなった改質ドロス残灰については、高温高圧水(亜臨界水)により短時間でアンモニア水と水酸化アルミニウムの一種であるベーマイトを合成できることを明らかにした。
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