研究課題/領域番号 |
26550076
|
研究機関 | 米子工業高等専門学校 |
研究代表者 |
谷藤 尚貴 米子工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80423549)
|
研究分担者 |
吉川 浩史 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60397453)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | リサイクル / 廃棄物 / 卵殻膜 / 燃料電池 / 低炭素 |
研究実績の概要 |
卵殻膜は化粧品や調味料の原料として,既に工業的なリサイクルが実用化レベルで達成されているが,このタンパク質製の天然膜を本来有する生命の発生に関わる機能を利用することができるならば,それは新しい機能性材料創製の可能性を開拓できると考えた.本年度は,卵殻膜の有する微細なタンパク質繊維等の構造的特徴を取り出す試みとして,燃料電池の電解質膜としての応用を目指した試作を試みた.具体的には,卵殻膜の両面にSEM用のスパッタコート装置による白金コーティングを施し,メタノール水溶液を燃料として導入し,起電力,I-V測定による評価を行った. 卵殻膜試料にスパッタリング装置で白金コーティングを行うと,容易に卵殻膜表面へ白金を付着することでき,このコートした面にメタノールを滴下すると,20 mV~70 mV程度の起電が生じた.この動作が見られた理由は,燃料極側の白金による触媒作用で起こるメタノールの分解反応から生じたプロトンが,従来燃料電池に用いられていた電解質膜同様に卵殻膜を介して空気極側の白金まで運ばれる現象が生じたためだと考えられる.次に卵殻膜が本来有する吸着能を用いて有機色素等の分子化合物を吸着させて,先と同様の実験をおこなったところ,無添加の膜に比べて電流値が向上することが分かった.これは,添加した色素が卵殻膜のタンパク質と相互作用することによって付着した際に,有機分子の内部構造がタンパク質中のプロトン伝導に寄与する部位として寄与する効果を示したためであると考えている.さらに,水溶性の金属イオンを吸着させた卵殻膜では,未処理の膜と比べると最大で50倍程度発電性能が高くなった.これは,先の有機色素の添加で生じた現象と同様に,卵殻膜へ新たに添加された金属イオンが卵殻膜においてプロトン伝導を示す部位として作用し,その寄与が有機色素と卵殻膜のタンパク質よりも大きいことが理由であると考えている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
卵殻膜をこれまで検討例の無い発電デバイスへ応用するための試作を行い,期待通りの現象を生み出した点で初年度の目標は達成できていると言える.さらには性能の改善に関しても一定の手順を明らかにしており,今後もさらなる性能改善が期待されている点で,計画以上に進展していると自己評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度得られた卵殻膜から生じる電力を高めるための手法として,卵殻膜のプロトン伝導度の直接測定とそれをふまえた膜の構造に関する性能改善を進め,従来の有機電解質膜との性能差の詳細を評価していく予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
課題を実証する試験に使用する試薬購入に予算の大半を充て,旅費は当初の予定よりも少なくなった点で,計画よりも仕様額は少なくなった.しかしながら,当初より国費を大切に使用するといいう意識で予算運用をしているため,旅費等の使用は抑制するなど,使用ペースは適切である様常に心がけた.次年度における共同研究者側で行う測定実験を行うための移動旅費等として未使用の予算は有効に利用していく.
|
次年度使用額の使用計画 |
共同研究者が新規に導入したプロトン伝導度測定装置の運用による卵殻膜の物性測定実験の費用として使用する.また,今年度,研究室所属の学生の国際オリンピック国内予選通過により,参加,発表が決定しているISEF(国際学生科学技術フェア)2015での現地における発表内容議論,準備指揮を直接行う為の旅費の一部に充てる.
|