研究課題/領域番号 |
26550077
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研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
友野 和哲 宇部工業高等専門学校, 物質工学科, 助教 (40516449)
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研究分担者 |
加藤 裕基 宇部工業高等専門学校, 一般科数学, 講師 (50707130)
白根 竹人 宇部工業高等専門学校, 一般科数学, 講師 (70615161)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 再資源化 / ブロモシラン / 逆オパールシリコン / 電気化学的手法 |
研究実績の概要 |
シリコンウエハー作製時に排出される廃棄物シリコンからブロモシランを合成できる。ブロモシランは,常温常圧で液体のため,ウエットプロセスである電気化学的析出に有利であり,ブロモシランからSi薄膜を電気化学的手法により作製する条件を見出した。 本研究では,鋳型を用いることで逆オパールシリコン膜およびオパールシリコンを作製する条件を明らかにし,鋳型を系統的に変更することで作製膜と分光学データとの比較を行うことを目的としている。また,ただリサイクルするだけでなく,ブロモシランから光学特性を持つ幾何学構造(フォトニック結晶)シリコンを作製することが出来れば,廃シリコンの付加価値を高め,効率的なリサイクルシステムの促進につながると考えている。平成26年度では,逆オパールシリコンの創製条件の最適化を行った。市販しているブロモシランを用いて,最適条件を検討した後,廃シリコンから合成したブロモシランを用いて,逆オパールシリコン膜の電気化学析出を実施した。作製したシリコン膜は,逆オパール構造に特有な可視下での構造色を有することが分かった。SEMおよびTEMによる表面観察を行い,鋳型に依存する析出膜であることを明らかにした。作製膜の絶対反射率測定から,その極大吸収波長が入射角に対してブルーシフトすることが分かった。ブラグ式とスネル式から導出されるオパール構造の反射率を算出する式から,実測値と計算値に相関性が見られた。現在,より精密な計算を行えるよう導出式の変更を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PS(ポリスチレン粒子)の粒径(0.24, 0.5, 1.0, 1.5μmφ)を系統的に変更し,鋳型を作製した。鋳型の作製条件(PS粒子濃度,蒸発温度)の最適化を行い,各粒子径での最適条件を明らかにした。SEMおよびTEMによる元素分析に好適な0.5μmφに粒径に絞り研究を進めた。続いて,市販されているテトラブロモシランを用いて,逆オパールシリコン膜の作製条件の最適化(ブロモシラン濃度,浴温度,析出時間)を行った。電解電位は,-3.0V(vs quasi-Pt)とした。また,廃シリコンから作製したブロモシラン液を用いて,逆オパールシリコン膜を作製した。可視下において,構造色を示すシリコン膜を作製できた。また,SEM及びTEMによる表面・断面観察から,鋳型に依存する逆オパールシリコン膜が作製できていることがわかった。元素分析により,作製したシリコン膜は,原料であるブロモシランに比べ,Niなどの濃度減少が観測されたが,詳細はICP-AESによる分析を行うことした。全反射装置により,入射角に対する反射角のスペクトル分析を行った。構造色特有の入射角に対する極大波長のシフト(ブルーシフト)が観測された。同時進行として,ブラグ式とスネル式から,入射角に対する反射スペクトルの算出式を導出した。実測値と理論値には,相関性があることは確認できた。一方で,導出した式は,オパール構造を形成する球体の重心を反射点としているが,実際には球体の表面で反射しているので,この仮定の違いによる誤差が生じていた。今後は,表面による反射を考慮した式の導出を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
逆オパールシリコンの作製条件は明らかとした。PS粒子径に対する系統的な分光学データの取得を粛々と進める。また,オパールシリコンについては,TEMによる断面解析から,空隙に完全にシリコンが充填していないことが分かっている。この問題については,反応条件(電解電位・ブロモシラン濃度・浴温度)を精査して,完全充填したオパールシリコンの創製条件を明らかにする。ブロモシランは常温常圧で液体のため,反応条件を変更するのは気体であるクロロシラン系より有利であり,ここに新規性があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
洋書購入による差額・旅費計算による差額のために未使用金額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は,平成27年度の直接経費に充てることとする。
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