研究課題/領域番号 |
26550085
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研究機関 | 国立研究開発法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
長井 敏 国立研究開発法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, グループ長 (80371962)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核酸クロマトグラフィー / multiplex-PCR / 有毒渦鞭毛藻 / 有害赤潮 / 分子同定 |
研究実績の概要 |
本研究では、核酸クロマトグラフィーとMultiplex-PCR法を併用することで、20種類の有害赤潮・貝毒原因藻をわずか3本のPCRチューブで15分以内に検出できる画期的な分子モニタリング手法の開発を目指す。本法は、従来法に比べ操作が簡単で、短時間・多種同時検出が可能であり、モニタリング現場で有効活用出来るものと期待される。 Alexandrium属5種(有毒種3種、無毒種2種)を同時に検出できる核酸クロマトチップについては、種によって異なるが、DNA量で0.1-10pg、リボソーマルRNA遺伝子が5-500コピーあれば検出可能であることを確認した。本年度は、八代海16サンプル、鹿児島湾10サンプルの環境DNAサンプル(500mLの海水をろ過し、全プランクトンを捕集し、DNA抽出)から、どの程度、検出できるか検討を行った。その結果、Alexandrium affineは9個、A. catenellaは2個、A. fraterculusは19個、A. tamarenseは1個、A. tamiyavanichiiは6個のサンプルからそれぞれ検出された。次世代シーケンスのデータや他の方法と比較した結果、有意差は見られず、多種のプランクトンDNAを含む環境DNAサンプルからでも、高感度で検出できることを確認した。 有害赤潮藻6種を同時に検出できる核酸クロマトチップの開発については、検出感度を検討した。その結果、Karenia mikimotoiで100fg、Cochlodinium polykrikoidesとHeterocapsa circularisquamaでは1pg、Chattonella antiqua、C. marina、C. ovataでは10pgであり、Alexandrium属で得られた検出感度と遜色がないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有毒渦鞭毛藻5種、有害赤潮藻6種を同時に検出できる核酸クロマトチップの開発に成功したこと、これらをすでに複数の研究会で実際に使用し、その良好な操作性と正確性を確認することができたこと。また、共同研究者の株式会社カネカの方から、既に試験販売が開始されており、複数の都道府県のプランクトンモニタリング担当者が購入し、モニタリングに使用している状況にある。加えて、カネカとの共同作業により、発色が強化されたこと、高速PCRを可能にする増幅酵素を開発している状況にある。以上のような状況なので、予定通りの進捗と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、有害赤潮藻6種を同時に検出できる核酸クロマトチップについて、環境DNAサンプルを用いて検出感度を確認し、専門家でなくとも使えるような安定した検出が可能か、検出感度・発色は十分かなどについて検討を行う。加えて、都道府県の研究者に、試験的に販売し、使用に関するフィードバックをもらうことを予定している。時間的な制約もあるので、3個目のチップの開発は行わず、PCRの高速化に関する研究を進めたいと考えている。
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