本研究では、核酸クロマトグラフィーとMultiplex PCRを併用することで、20種類の有害赤潮・貝毒原因藻をわずか3本のPCRチューブで15分以内に検出できる画期的な分子モニタリング手法の開発を目指す。本法は、従来法に比べ操作が簡単で、短時間・多種同時検出が可能であり、モニタリング現場で有効活用できるものと期待される。 昨年度、八代海16サンプル、鹿児島湾10サンプルの環境DNAサンプル(500 mLの海水をろ過し、全プランクトンを捕集し、DNA抽出)から、どの程度、検出できるか検討を行った。その結果、Alexandrium affineは、のべ9個、A. catenellaは2個、A. fraterculusは19個、A. tamarenseは1個、A. tamiyavanichiiは6個のサンプルからそれぞれ検出された。次世代シーケンスによるメタゲノム解析や他のPCR法での検出結果と統計学的に比較したところ、有意差は見られず、多種のプランクトンDNAを含む環境DNAサンプルからでも、高感度で検出できることを確認した。現在、試験販売を行い、都道府県の水産試験場等の貝毒のモニタリング担当者により使用されつつあり、普及が進んでいる。有害赤潮6種を同時に検出できる核酸クロマトチップの開発については、昨年度、検出感度を検討した。その結果、Alexandrium属で得られた結果と遜色のない結果を得た。しかしながら、複数種のDNAが混在する天然サンプルから検出を試みると、検出結果にムラが見られた。このため、nested PCR法による検出を試みたが、現在のところ、良好な条件を見つけることは出来ていない状況にある。
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