研究課題/領域番号 |
26550086
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
西尾 孝佳 宇都宮大学, 雑草と里山の科学教育研究センター, 准教授 (60302444)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ツル植物の宿主選択 / シュート動態 |
研究実績の概要 |
当該年度は,木本本ツルが,繁茂に先立ちどのような宿主を選択し,伸長していくかをハビタット特性との関係に注目して検証を進めた。自然定着した木本ツルが形成する発達段階の異なるパッチを抽出し,そのパッチにおける対象木本ツルのシュート発生量,被度,他の木本ツルの出現量,宿主の構成等について,独自に開発したサンプリング法に従い,計測を行った。また,パッチの発達段階の差異を生じさせる要因を推定するために,空中写真と土地所有者の聞き取りにより,土地利用の変遷に関するGIS解析を行った。その結果,クズにおいては,耕作放棄直後など発達段階初期では,登攀対象となる植物には木本種が少なく,他の木本ツルの出現も限定的だった。クズのシュート成長は,相対PARが高い光条件の下で,草本や自身を登攀対象に最も旺盛で,また登攀しないシュートも多かった。一方,クズパッチが発達すると,登攀対象に木本種が量・質ともに増加し,フジ,スイカズラを始めとして,同所的な木本ツルの出現が多く確認された。こういった植生構造内におけるクズのシュート成長は,R/ FR比が低い光条件の下で,相対的に低く,登攀に限定された。フジはクズとはハビタット,宿主選択において,対照的なパターンを示した。以上より,木本ツルの宿主選択とシュート成長では,パッチの発達段階とそれに伴う宿主植生構造及び光環境の変化によって影響されることが示唆された。また,他の木本ツルとの共出現パターンも一定ではないと考えられた。この結果は,環境操作実験における解析結果と比較することで,対象木本ツルの繁茂条件の推定において有効な情報となると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2015年9月の洪水によって実験区が流去してしまった後,実験区の再生を試みていたが挿し穂の生育が著しく悪く,計測が出来る段階に至っていない。そこで,植物材料を種子からの発芽個体に拡大し,準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
自然定着個体に関するモニタリングは引き続き継続し,クズ,フジ,スイカズラ,ツルウメモドキの原産地域におけるハビタット分化と宿主選択の関係を明らかにしたい。計画していた挿し穂を用いた野外植栽実験は著しく遅延しているため,光環境などを操作した温室実験の準備を進めている。この手法では,遺伝的な差異については検証できないが,野外で観察されている光環境への応答特性の種間差異については成果が得られると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年9月に鬼怒川で発生した洪水によって,本研究課題で実施していた植栽実験区の多くが流去してしまった。これまで,再度実験するための挿し穂を準備してきたが死亡が多く,実験の再開に十分な個体が得られなかった。現在,活着が不安定な挿し穂に代えて,種子発芽由来の植物を準備しており,その植物に代えた実験と対応した自然定着個体のモニタリングによって,研究成果を挙げたいと考えているため。
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次年度使用額の使用計画 |
申請者が構築してきた光環境操作温室において,種子発芽由来の植物を用いた実験を実施する。繰り越した研究費は,その供試植物,栽培環境の整備自然定着個体のモニタリングに使用する。また,学術論文として研究成果を発信するためにも研究費を活用したい。
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