研究課題/領域番号 |
26550087
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鎌田 直人 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (90303255)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / チェコ / ニューギニア / 植食性昆虫 / 群集 / 系統的制約性 |
研究実績の概要 |
植食性昆虫の種分化は寄主植物との共進化によるため、昆虫のローカル群集は寄主である植物の群集構造にも密接に関係している。葉食者である鱗翅目昆虫(以下、昆虫)と寄主植物の群集レベルでの関係を解析した。特に昆虫の食性幅に注目して、選好性‐パフォーマンス関係から葉食性昆虫群集の創出機構について考察を行った。 北海道大学苫小牧研究林の天然林内に0.15haのプロットを設置し、プロット内の胸高直径5cm以上の樹木から鱗翅目幼虫を採集し、採集された樹木と同種の葉を与えて飼育した。 NMDSの結果、葉食性昆虫群集に対する植物の系統的な影響を示唆していた。一方で、ジェネラリスト率や鱗翅目種数には系統制約性がなかった。この結果は、植物の種分化に伴ってそれぞれの植物群で独立に葉食性昆虫の適応・種分化が進行したことを示す。ハマキガ科2属では属内のニッチ分化の程度が異なっていた。ニッチの分化が進んでいた属では寄主植物間でサイズの有意な差がなかった。属内でニッチ分化の程度の低い属では寄主植物間でサイズに有意な差があった。食性幅が広いジェネラリストである同属のカシワマイマイとマイマイガは、本研究でも寄主数種が重複し、食樹のニッチ分化は見られなかった。また、樹種間でのサイズの差に同様の傾向が認められた。これらの結果から、ニッチ分化が進んだグループでは寄主植物に対しより適応的で、寄主植物間の性質の変動を受けにくく、安定したパフォーマンスを得るように進化しているものと考えられた。また、ハイナミスジキヒメハマキは選好性が高いアサダで生育した個体(全個体の約95%)はサワシバで生育した個体に比べ大きく、選好性‐パフォーマンス関係が強いことを示していた。このような強い選好性‐パフォーマンス関係は、適応度が高くなる樹種を選択する結果、適応的な寄主へのニッチ分化を引き起こすメカニズムの一つとして働くものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、東大秩父演習林で高所作業車を使って調査を行う予定だったが、予定を変更して北大苫小牧演習林のクレーンを使うように変更したため、作業効率が当初予定していたよりも高くなった
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今後の研究の推進方策 |
2年目にあたる2015年度も引き続き北大苫小牧実験林で調査を継続する。 天然林内に0.15haのプロットを設置し、プロット内の胸高直径5cm以上の樹木から鱗翅目幼虫を採集する。採集は2015年5月中旬から7月末まで行る。幼虫は採集された樹木と同じ樹種の葉を与えて、個別の容器で飼育する。羽化した個体は種を同定し、体サイズの指標として前翅の幅などを測定する。幼虫採集と同時に各樹木個体から無作為に採集した葉をスキャンして、画像処理ソフト(ImageJ)により葉一枚当たりの面積を調べる。採集した葉からSLAを求める。樹木個体ごとに葉の総面積を計算し、SLAで除することで葉の総乾燥重量を計算する。それらを合計して樹種ごとの葉の総乾燥重量も算出した。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、東大秩父演習林で高所作業車をレンタルして調査する予定だったが、既設のクレーンを北大苫小牧演習林で使用できることになった。逆に、乗用車のレンタルが必要になったが、ほぼこれらの差額が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
当初は2年間で調査を終える予定だったが、既設のクレーンを使って調査が可能になったため、3年目にも調査を行うことに計画を変更する。
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